貸金業(読み)カシキンギョウ

デジタル大辞泉 「貸金業」の意味・読み・例文・類語

かしきん‐ぎょう〔‐ゲフ〕【貸(し)金業】

事業者消費者に融資を行う専門業。ふつう、銀行や証券会社などの大手金融業は含めず、小規模の事業者または個人消費者を対象とするノンバンクをさす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貸金業」の意味・わかりやすい解説

貸金業
かしきんぎょう

金銭の貸付または金銭の貸借の媒介を営業とする業務。銀行、信託、保険のように専門の業法が法律で制定されているものは除かれる。貸金業は、時代の変化のなかで大きく変遷してきた。

〔1〕第二次世界大戦後、まもなく闇(やみ)金融が横行したため、1949年(昭和24)に「貸金業等の取締に関する法律」が制定され、貸金業は届出制となり、預り金浮貸しの禁止など業務内容が規制された。

〔2〕その後、不特定多数の者から零細資金を集めたり、預金類似行為を営み倒産する業者が現れたりしたため、1954年6月には「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資法)が制定され、1949年の「貸金業等の取締に関する法律」を廃止した。そして高金利に対する規制や金銭貸借媒介手数料の制限などが実施された。

〔3〕1970年代になるとサラリーマン金融(サラ金)が急増する反面、その高金利や人権を無視した取り立てが社会問題化し、1972年に「貸金業者自主規制の助長に関する法律」により都道府県単位の庶民金融業協会と全国組織とが誕生した。1983年には「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業規制法)の制定と、出資法の改正が行われ、貸金業を届出制から登録制に変更し監督を強化するとともに、誇大広告の禁止、過剰貸出の防止、上限金利の段階的な引き下げなどの規制がとられた。

〔4〕1990年代に入りバブル経済崩壊のなかで、貸金業はノンバンク(nonbank)という用語のなかに含まれた。ノンバンクは「預金等を受け入れないで与信業務を営む会社」と定義され、金融システムのなかに包容されていった。今日ノンバンクには、サラ金業(消費者向け無担保貸金業)、事業者向け無担保貸金業、事業金融会社(不動産担保金融会社、抵当金融会社など)、信販業、クレジットカード会社、リース会社などの貸金業規制登録業者と、貸金業規制法適用除外の住宅金融専門会社(住専)に分類されている。

〔5〕1990年後半以降、平成不況が長引くなか、銀行の不良債権問題等により銀行の融資姿勢が厳しくなったことから、出資法の上限金利(2000年6月からは年29.2%)を大幅に上回る金利で貸し付ける、いわゆる「闇金融業者」の被害が多発するようになった。そこで悪質な違法業者を取り締まるために貸金業規制法を強化した改正法(通称「闇金融対策法」)が成立し、2004年(平成16)1月に施行された。

〔6〕その後、闇金融対策法が「施行後3年をめどとして必要な見直しを行う」とされたことに加え、厳しい経済状態のなかでの多重債務者問題の深刻化を背景に、貸金業規制法の総合的かつ抜本的な改正を求める世論が高まっていた。そこで(1)貸金業の適正化、(2)過剰貸付の抑制、(3)金利体系の適正化、などを中心とする改正が行われることになった。具体的には以下の通りである。

(1)貸金業の適正化 次のような四つの対策からなっている。(a)貸金業者の最低純資産の引上げ(個人300万円、法人500万円→5000万円)や貸金業取扱主任者についての資格試験の導入などにより、貸金業への参入条件を厳格化する。(b)貸金業協会を母体とし内閣総理大臣の許可を受けた「日本貸金業協会」を設立し、当該協会に自主規制ルールを制定するなど、貸金業の自主規制機能の強化を図る。(c)リボルビング契約(毎月一定に設定した額を支払う契約)の交付書面に関する規定の導入や契約前の事前の書類交付の義務づけなど、書面交付の規制強化に加え、夜間だけでなく日中の執拗(しつよう)な取立て行為に対しても規制を強化するとともに、貸金業者による、借り手等の自殺により保険金が支払われる保険契約の締結を原則禁止することなど、貸金業者の行為規制の強化を図る。(d)規制違反に対して機動的に対処するため、登録取消しや業務停止に加え、業務改善命令を導入する。

(2)過剰貸付の抑制 次のような二つの対策からなっている。(a)信用情報の規模、財産的基礎などといった条件を満たす信用情報機関を指定し、貸金業者は個人信用情報を当該信用情報機関に提供する義務を課すなど指定信用情報機関制度の創設を図る。(b)貸金業者に借り手の返済能力の調査を義務づけるとともに、総借入残高が年収の3分の1を超える貸付(住宅ローン等を除く)を原則禁止するなど総量規制の導入を図る。

(3)金利体系の適正化 次のような三つの対策からなっている。(a)いわゆるグレーゾーン金利(出資法の上限金利29.2%と利息制限法の上限金利20%の間の金利)を廃止し、貸金業の上限金利を利息制限法と同じ20%に引き下げる。(b)業として行う貸付の利息には契約締結費用や債務弁済費用を含むなどといった金利概念の適正化を図る。(c)日賦(にっぷ)貸金業者および電話担保金融の特例を廃止する。

 以上のような改正項目等を盛り込み、法律の名称も「貸金業規制法」から「貸金業法」に改められ、2007年12月に施行された。ただし、前記のように改正項目が多岐にわたっていることから、全体としては「公布から1か月後までに行われる第1施行」(罰則の引き上げ)から「施行から2年半以内に行われる第4施行」(総量規制導入や財産的基礎の5000万円への引上げなど)までの4段階に分けられ、2010年6月に完全施行となった。また、社会的にみて不都合が生じる場合などにおいては例外等が設けられている。たとえば、市民の有志から無配当で資金を調達し、コミュニティなどの発展に役だつ主体等に貸出を行っている、いわゆる「NPOバンク」については、財産的な基礎が2000万円や5000万円に引き上げられると存続ができなくなったり、新規設立が困難になったりすることから、当該団体に関しては純資産要件を500万円以上にするなどの措置を講じている。なお、この例外措置を受けるには「非営利法人であること」「低金利(7.5%)であること」「貸出内容等の情報開示を行うこと」「NPO法17分野向け・生活困窮者向け貸出を主たる目的とすること」といった要件をすべて満たしている必要がある。

[石野 典・前田拓生]

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改訂新版 世界大百科事典 「貸金業」の意味・わかりやすい解説

貸金業 (かしきんぎょう)

業として金銭の貸付けまたは金銭の貸借の媒介を行うものをいう。手形割引,売渡し担保による金銭の交付も含まれる。江戸時代に入ると,貨幣経済の発達とともに諸侯,武士を相手とする両替商,小銭屋(大坂では掛屋,江戸では札差と呼ぶ)が生まれ,庶民を相手とする盲金(めくらがね)(座頭金),烏金(からすがね),百一文等の貸金業(高利貸)がおこった。明治・大正時代には貸金業が多く,農民は多くの被害に遭い,一般の人々は高利にあえいだ。第2次大戦後には闇金融が猛威をふるい社会秩序のうえから1949年に〈貸金業等の取締に関する法律(貸金業法)〉が定められた。しかし,なお預金類似行為を営んで,一般の人々を惑わすことが多かったため,貸金業法に代わって54年〈出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)〉が施行され,出資の受入れ規制,預り金・浮貸しなどの禁止,高金利(日歩30銭を超えるもの)に対して処罰を行うことによって,高金利の防止を図ることになった。不良業者はその法の網の目をくぐって不正を働いたため,不良貸金業者を排除する目的で71年〈貸金業者の自主規制の助長に関する法律〉が施行された。その後,貸金業に対して,その高金利と常軌を逸脱した厳しい取立て,暴力行為,また結果としてのいわゆる〈サラ金禍〉に社会的批判が高まった。こうした状況をうけて,〈貸金業の規制等に関する法律(貸金業規制法)〉と前出の出資法の改正法,いわゆる貸金業規制2法が83年5月に公布され,同年11月から施行された。そのおもな内容は,(1)開業にあたって事前登録制とし,誇大広告や威圧的な取立てを規制し,違反業者は業務停止処分をうける,(2)金利は施行後3年間は年73%(日歩20銭),その後は54.75%(同15銭),最終的には40.004%(同10.96銭)まで下げる(出資法改正法),(3)現行の利息返還請求権を否定し,任意の支払利息は有効な弁済とみなす(貸金業規制法43条),などである。
サラリーマン金融 →消費者金融
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貸金業」の意味・わかりやすい解説

貸金業
かしきんぎょう

銀行,相互銀行,信用金庫,保険会社などの一般金融機関以外で金銭の貸付けまたは貸借の媒介を業務とするもの。いわゆる町の金融業者で,手形金融,証券金融,不動産金融,動産金融 (電話金融を含む) ,信用貸し (いわゆるサラリーマン金融) などにおおむね専門化している。免許ではなく届け出によって営業できるが,無届けのものもあり,実態はつかみにくい。

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