サルオガセ(読み)さるおがせ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルオガセ」の意味・わかりやすい解説

サルオガセ
さるおがせ

地衣類サルオガセ科サルオガセ属の総称。日本には約40種が知られている。地衣体糸状(細い円柱状)で、大木の幹や枝から垂れ下がるものが多い。横断面では中央部に柔らかい中軸があり、この周りに髄層、皮層がある。地衣体は二叉(にさ)状に枝分れをし、長いものでは40~50センチメートルになり、ときには細くて短い枝を多数出すこともある。子器は枝の先端につき、円盤状をしている。

 ナガサルオガセUsnea longissimaは日本の針葉樹林帯に普通にみられる代表的な種類で、コメツガシラベカラマツなどの大木の枝から数多く垂れ下がり、独特な景観をつくる。地衣体の表面は多少ざらざらしているが、皮層の切れ目はなく、細長い側枝が多数出る。ナガサルオガセとよく似たものにヨコワサルオガセU. diffractaがあり、ナガサルオガセとほぼ同じような場所に生える。ヨコワサルオガセの地衣体の皮層部には横に環状となる割れ目が入っている。一般にサルオガセという場合はこのヨコワサルオガセをさすことが多い。フジサルオガセU. montis-fuji富士山を中心とする中部日本に多く、ナガサルオガセに似ているが、地衣体の表面はよりざらざらしており、サラチン酸、ウスニン酸地衣成分としてもっている。サルオガセの仲間漢方薬に利用され、「松蘿(しょうら)」とよばれる。咳(せき)止め、結核に効くとされるほか利尿剤強心剤としても有効であるという。

[井上 浩]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サルオガセ」の意味・わかりやすい解説

サルオガセ
Usnea longissima; hanging moss

樹木に着生する樹状地衣類の1種。体は糸状,主軸のまわりに枝分れが著しく長く垂れ下がる。全体は黄みがかった色で柔軟である。子嚢を生じる子器の形成はきわめてまれである。なお日本にはヨコワサルオガセ U. diffracta,フクレサルオガセ U. japonicaなどがある。前者は体が二叉分岐をし,通常長さ 15cm,ときに 30cmに及ぶ。後者は体が太い糸状の部と,細い糸状の部と混在している。両者とも糸状部に横に割れ目がある。

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