改訂新版 世界大百科事典 「サルオガセ」の意味・わかりやすい解説
サルオガセ
beard lichen
Usnea longissima Ach.
亜高山の針葉樹林の枝から垂れ下がる樹枝状地衣。レース状の大群落をなすことが多い。地衣体は糸状で根もとで二叉(にさ)に分かれるが,その後はほとんど分枝せず,長さ50~100cm,時には3mを超える。一名ナガサルオガセともいう。主軸は直径1~2mm,皮層を欠き,灰緑色で主軸に直角に長さ1~2cmの小枝をたくさんつける。子器はまれに小枝上に生じ,皿形で直径2~4mm,胞子は無色1室。北海道から四国にかけての針葉樹林帯やブナ帯に生育し,北半球一帯に広く分布する。
サルオガセ属Usneaは日本から40種類以上が知られている。地衣体は例外なく糸状で垂れ下がる種類が多い。地衣体の横断面は円形で,外側から皮層,髄層,中軸の順に配列する。主な種類には,地衣体が二叉分枝をくり返し,皮層にリング状の割れ目の多いヨコワサルオガセU.diffracta Vain.,さらに皮層に赤色の色素をもつアカヒゲゴケU.rubicunda Stirt.などがある。
サルオガセ類はウスニン酸usnic acidを含み,松蘿(しようら),老君鬚(ろうくんしゆ)などと称して,利尿,解熱,去痰薬とする。
執筆者:柏谷 博之+新田 あや
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報