日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンジャル」の意味・わかりやすい解説
サンジャル
さんじゃる
Aziz Sancar
(1946― )
トルコとアメリカの二重国籍をもつ生化学者、分子生物学者。トルコ南部のマルディン県生まれ。1969年にイスタンブール大学医学部卒業、1975年にテキサス大学ダラス校修士号取得、1977年に同校で博士号(分子生物学)取得。1977年からエール医学研究所でポスドク研究員(博士研究員)、1982年ノースカロライナ大学準教授、1988年同大教授、1997年からノースカロライナ大学チャペルヒル校教授。
細胞分裂の際、DNAのコピーが間違った場合や外部から入ってきた紫外線などによってDNAが損傷した場合に修復するメカニズムがある。サンジャルは、DNAの修復に重要な三つの遺伝子を大腸菌で発見した。そして、これらの遺伝子産物のタンパク質が、損傷を受けている12個または13個の一本鎖DNA(ヌクレチオ)を取りはずし、DNAポリメラーゼとDNAリガーゼという酵素で正しい塩基配列で埋めて修復することを解明した。これは「ヌクレオチド除去修復nucleotide excision repair」という方法で、世界で初めて明らかにされた。この仕組みをもたない人が皮膚癌(がん)になることが知られており、サンジャルのこの解明は、皮膚癌の治療法開発などに寄与するものとみられている。
2005年アメリカ科学アカデミー会員、2006年トルコ科学アカデミー会員、2007年ベフビ・コチ賞を受賞。2015年「DNA修復の仕組みの研究」で、スウェーデンの生化学者トマス・リンダール、アメリカの生化学者ポール・モドリッチとノーベル化学賞を共同受賞した。
[馬場錬成 2016年5月19日]