ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マリク・シャー」の意味・わかりやすい解説
マリク・シャー
Malik Shāh, Jalāl al-Dawla Mu`izz al-Dīn Abū al-Fatḥ
[没]1092.11. バグダード
イラン,セルジューク朝第3代のスルタン (在位 1072/3~92) 。父アルプ・アルスランの死後,若くして即位したが,名宰相ニザームル・ムルクの補佐を得て,スンニー派イスラムを軸とする支配体制の強化に努めた。外に対しては,カラハン朝に対するマーワラー・アンナフル遠征を敢行してカシュガルにまでいたり,またカフカス方面での作戦によってムスリムおよびキリスト教諸勢力を抑圧し,アナトリア地方にも軍隊を派遣してビザンチン領を蚕食。さらにシリア,パレスチナをファーティマ朝より奪って,パミール高原から地中海に及ぶ広大な地域をその版図とし,同朝の最盛期を現出させた。しかし,晩年の後継者問題をめぐる紛糾は,以後の同朝の内部分裂の原因となった。彼自身は文盲であったが,その宮廷に著名な学者,文人を集めて,イラン・イスラム文化の保護,育成に努め,また首都イスファハンをはじめ,各地の造営事業にも力を注いだ。
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