日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクロアルカン」の意味・わかりやすい解説
シクロアルカン
しくろあるかん
cycloalkanes
分子内に1個の環構造をもつ飽和脂環式炭化水素の総称。シクロパラフィンともいい、石油化学の分野ではナフテンとよぶ。シクロアルカンcycloalkaneの名は、飽和炭化水素の総称であるアルカンalkaneに「環」を意味する接頭語のシクロcyclo-をつけてつくった名前である。一般式CnH2nで示され、鎖状のアルケンと異性体である。
安定性や反応性は環の大きさによって異なる。小環状(3、4員環)化合物は、結合角のひずみによるひずみエネルギーが大きく、かなり不安定であり、開環反応などを受けやすい。正常環(5~7員環)化合物は、ひずみがなく、安定な立体配座をとるのでエネルギー的に安定である。中環状(8~11員環)になると、メチレン基-CH2-の水素が重なったり、環の内側を向いた立体配座をとるようになるので、多少の不安定さを生ずるが、大環状(12員環以上)となるとふたたびエネルギー的に安定となる。中、大環状化合物の合成はかなり困難であり、高度希釈下での環をつくらせる合成法による。
[向井利夫・廣田 穰]