翻訳|flying boat
水上に発着する飛行機のうちで,胴体を直接水につけて浮くもの。飛行艇の胴体は艇体と呼ばれ,水密構造に作られていて,下面はモーターボートの底と似た形をしている。これで水上を滑走して離水や着水をする。その際に上がる水しぶきからエンジンや翼を保護するため,主翼を高翼式に艇体の上に取り付け,尾翼も高い位置に置き,艇体は陸上機の胴体に比べると高さが高いのが外観上の特色となっている。また水上で横に倒れるのを防ぐため,翼端近くに補助フロート(小型の舟形のうき)をつけたものが多い。
飛行艇は1912年アメリカのカーティスGlenn Curtiss(1873-1930)によって初めて作られ,第1次世界大戦から第2次大戦にかけては,各国の海軍や民間で,海上哨戒や海上航空輸送に盛んに使われた。これは当時は今のような長い滑走路をもつ飛行場がなかったため,積荷と長距離飛行に必要な多量の燃料を積んだ重い機体を出発させるには,長い滑走のできる水面が各地に得られる飛行艇が有利であったことと,飛行中にエンジン故障などで不時着する場合の安心感などが理由であった。とくに1930年代は飛行艇の黄金時代で,プロペラ式4発・数十席・全幅40m程度の大型飛行艇により,北アメリカ~アジア間の太平洋横断,北アメリカ~ヨーロッパ,ヨーロッパ~南アメリカ間の大西洋横断などの,郵便や旅客の定期航空便が開設された。しかし第2次大戦中に大型陸上長距離機が発達し,世界各地の飛行場も整備されるに伴い,飛行艇は陸上機に比べ,空気抵抗が大きく,水上での取扱いや整備に手間がかかり,海水による腐食もあることなどで不利となり,戦後は陸上機に地位を譲った。今日,飛行艇は少数機が水上に発着できる特性を活かして,海上救難や哨戒,空港のない離島への輸送,山林火災の消火(水面を滑走して水を機内に取り入れ,火災上空から投下)などに使われている。
→水上機
執筆者:久世 紳二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水面に発着するように設備された飛行機。普通の水上機と異なり、乗員・乗客・諸装備などを収める胴体部分を舟形にしてある。広い静かな水面があれば、広大な滑走路を必要とせず発着できるので、一時期(第二次世界大戦の初期、1935年から40年ごろ)、長距離用の大型機は飛行艇に限られていた。しかし、(1)胴体が舟形なうえに、エンジンを水面から離して取り付けなければならず、そのため機体の空気抵抗が大きくなる、(2)離水するとき水の抵抗に打ち勝つために強力なエンジンを必要とすることなどで経済性が劣る、(3)水に浮くため胴体内に防水区画を設ける必要があり、そのために搭載量が少なくなる、(4)海面を利用すると海水による機体の腐食が激しく、機体の寿命が短い、(5)計器着陸などの着陸誘導施設の設置が困難で、また技術的に水面への発着の際の操縦がむずかしい、など飛行機として不利な面が多く、陸上機の性能が向上したうえ、飛行場の建設技術が発達した現在では、ごく特殊の目的(救難、哨戒(しょうかい)、レジャー)以外には使われていない。日本は飛行艇に関して世界有数の技術をもっており、大戦中は二式大艇、戦後はPS-1などの高性能の飛行艇を生産してきた。現在海上自衛隊ではUS-1A、US-2を救難機として使用している。
[落合一夫]
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