シュアレス(読み)しゅあれす(英語表記)André Suarès

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュアレス」の意味・わかりやすい解説

シュアレス
しゅあれす
André Suarès
(1868―1948)

フランスの批評家。本名はイザック・フェリックス・シュアレス。マルセイユ生まれのユダヤ人で、高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)卒業後、教授資格取得に失敗し、文筆活動に専念する。ロランペギークローデル、ジッドらと親交を結ぶが(彼らとの往復書簡集は有名)、文壇的には終始孤立を続ける。イブ・スカントレル、カエルダル、セイプセなどの筆名を用いる。詩、劇、旅行記、エッセイを手がけるが、つねに深い批評的省察を伴う。イタリア美術行脚(あんぎゃ)ともいうべき『傭兵隊長(コンドチエーレ)の旅』Voyage du Condottiere(1910~32)、エッセイ『私の兄の死について』(1904)以来、人間の苦悩、悲惨、死を芸術創造にまで高める「偉大性」のテーマをみいだし、同時に、対象の核心を直観的にとらえ魂のことばに置き換える独自の批評的方法を確立した。時評集『生について』3巻(1909~12)、パスカルイプセンドストエフスキーの批評的肖像を描く『三人』(1913)を代表作として、著作総数はおよそ80。なかでも『ヨーロッパ展望』(1939)は、ヒトラーに偉大さの悪(あ)しき典型をみてとる、罵詈雑言(ばりぞうごん)批評の傑作とされる。

[松崎芳隆]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュアレス」の意味・わかりやすい解説

シュアレス
Suarès, André

[生]1868.6.12. マルセイユ
[没]1948.9.7. サンモールデフォセ
フランスの批評家,随筆家。厭世的理想主義者として安易な生活を拒み,友人 R.ロラン同様,苦悩を通してのみ達することができる芸術の偉大さ,美しさを人生の究極の目的と考えた。モラリスト的なエッセー集『生について』 Sur la vie (3巻,1909~13) ,作家論『三人-パスカル,イプセン,ドストエフスキー』 Trois Hommes: Pascal,Ibsen,Dostoïevski (13) ,紀行エメラルドの書』 Le Livre de l'Émeraude (02) ,『傭兵隊長の旅』 Le Voyage du condottiere (3巻,10~32) のほか,ワーグナーなどに関するすぐれた音楽評論がある。

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