シュアレス(その他表記)André Suarès

精選版 日本国語大辞典 「シュアレス」の意味・読み・例文・類語

シュアレス

  1. ( André Suarès アンドレ━ ) フランスの文芸評論家。神秘主義的な生命謳歌の立場で直観的な批評を展開。主著「三人」で、ドストエフスキーイプセンパスカルの三人を礼讚した。(一八六八‐一九四八

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改訂新版 世界大百科事典 「シュアレス」の意味・わかりやすい解説

シュアレス
André Suarès
生没年:1868-1948

フランスの文芸批評家。本名イザーク・フェリックスIsaac Félix。詩人的直観力を文芸批評の領域に発揮して,繊細な感性と鋭敏な知性を彫琢された文体のなかに融合しつつ,芸術香気に満ちた数々の批評作品を創造した。その著作では神秘的な禁欲主義と知的な審美主義が表裏一体となって,超俗の文学世界を形成している。偉大な精神の形姿の探究を文業のすべての目的とした彼は,文学,美術,音楽等の諸分野に,動揺し高揚する精神がついには平安を見いだす究極の一点を探し求めて倦むことがなかった。そして彼は,傲然とした孤高の風,絶対への希求の激しさゆえに,文壇的な孤立を強いられたことも間々あった。精神の偉大を求める彼にふさわしく,批評文の代表作には思想や芸術上の巨人を扱ったものが多い。《三人--パスカル,イプセン,ドストエフスキー》(1913),《偉大なヨーロッパ人,ゲーテ》(1932),《三人の偉大な生者--セルバンテス,トルストイ,ボードレール》(1937)などの著作がそれである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュアレス」の意味・わかりやすい解説

シュアレス
しゅあれす
André Suarès
(1868―1948)

フランスの批評家。本名はイザック・フェリックス・シュアレス。マルセイユ生まれのユダヤ人で、高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)卒業後、教授資格取得に失敗し、文筆活動に専念する。ロラン、ペギー、クローデル、ジッドらと親交を結ぶが(彼らとの往復書簡集は有名)、文壇的には終始孤立を続ける。イブ・スカントレル、カエルダル、セイプセなどの筆名を用いる。詩、劇、旅行記、エッセイを手がけるが、つねに深い批評的省察を伴う。イタリア美術行脚(あんぎゃ)ともいうべき『傭兵隊長(コンドチエーレ)の旅』Voyage du Condottiere(1910~32)、エッセイ『私の兄の死について』(1904)以来、人間の苦悩、悲惨、死を芸術創造にまで高める「偉大性」のテーマをみいだし、同時に、対象の核心を直観的にとらえ魂のことばに置き換える独自の批評的方法を確立した。時評集『生について』3巻(1909~12)、パスカル、イプセン、ドストエフスキーの批評的肖像を描く『三人』(1913)を代表作として、著作総数はおよそ80。なかでも『ヨーロッパ展望』(1939)は、ヒトラーに偉大さの悪(あ)しき典型をみてとる、罵詈雑言(ばりぞうごん)批評の傑作とされる。

[松崎芳隆]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュアレス」の意味・わかりやすい解説

シュアレス
Suarès, André

[生]1868.6.12. マルセイユ
[没]1948.9.7. サンモールデフォセ
フランスの批評家,随筆家。厭世的理想主義者として安易な生活を拒み,友人 R.ロラン同様,苦悩を通してのみ達することができる芸術の偉大さ,美しさを人生の究極の目的と考えた。モラリスト的なエッセー集『生について』 Sur la vie (3巻,1909~13) ,作家論『三人-パスカル,イプセン,ドストエフスキー』 Trois Hommes: Pascal,Ibsen,Dostoïevski (13) ,紀行『エメラルドの書』 Le Livre de l'Émeraude (02) ,『傭兵隊長の旅』 Le Voyage du condottiere (3巻,10~32) のほか,ワーグナーなどに関するすぐれた音楽評論がある。

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百科事典マイペディア 「シュアレス」の意味・わかりやすい解説

シュアレス

フランスの批評家,詩人。ペギーらと交わり《半月手帖》に執筆,次いで《NRF》誌の創刊に寄与,健筆を振るう。パスカル,イプセン,ドストエフスキーを論じた《三人》のほか,シェークスピア,ゲーテに関する評論,エッセー《生命のままに》,評論《音楽と詩》などに深い洞察力を示し,また紀行文は名文。

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