日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュパン」の意味・わかりやすい解説
シュパン
しゅぱん
Othmar Spann
(1878―1950)
オーストリアの社会学者、経済学者。ウィーン、チューリヒ、チュービンゲン各大学に学ぶ。1919年から1938年までウィーン大学の教授であったが、第二次世界大戦後ふたたび教職に戻ることはなかった。ドイツ・ロマン主義の社会観を受け継いだため、普遍主義的社会論を展開した。したがって、個人はあくまで普遍的全体としての共同体の部分であり、全体は部分よりなる有機的構成であるとする。この有機的構成体を支えているのは、理念的統一体たる国家の権力であると説くが、具体的には中央集権的官僚統治を廃して身分的共同体をもって国家の再編を行うという、いわゆる「職分国家」を提唱した。当初、経済学関係の著書もあり、経済学者と目された。『社会哲学』(1928)などの著書がある。
[鈴木幸寿]
『秋沢修二訳『社会哲学』(1943・白揚社)』