社会哲学(読み)しゃかいてつがく(その他表記)social philosophy

精選版 日本国語大辞典 「社会哲学」の意味・読み・例文・類語

しゃかい‐てつがくシャクヮイ‥【社会哲学】

  1. 〘 名詞 〙 社会一般についての哲学考察政治哲学社会問題に対する政治的または倫理的原理とその適用についての批判的哲学的研究社会学基礎論などを含む。

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改訂新版 世界大百科事典 「社会哲学」の意味・わかりやすい解説

社会哲学 (しゃかいてつがく)
social philosophy

社会哲学は,何らかの意味での人間社会についての哲学的考察という広い意味で解すれば,すでにプラトンの〈理想国〉論以来存在したといえるだろう。しかしこの言葉が成立したのはホッブズ以来といわれるように,近代になって,国家と区別された市民社会を対象とした包括的な考察が,ふつう社会哲学と呼ばれている。ロックらの自然法論,ルソーらのフランス啓蒙主義,スミスらの古典経済学,へーゲルに頂点を見いだすドイツ観念論哲学,それを転倒させたマルクス史的唯物論などが,その古典的形態である。しかし19世紀の中葉以降の社会学,経済学などの発達にともない,社会を対象とする学問主役は社会科学であるという考えが支配的となり,社会哲学はむしろ社会科学以前の,あるいは以外の副次的なものだと考えられるようになっていった。この考えは最近まで一貫した傾向であり,社会認識と社会科学とを同一視することが常識化している。

 しかし社会諸科学の発展にともない。それらが専門的に分化の度を強めるとともに,ふたたび社会についての包括的な認識を社会哲学に求める気運が強まってきた。これはいわば社会科学以後の社会哲学への要求といえよう。マルクス主義内部でも,物象化論,自己疎外論をめぐるルカーチ以来の再哲学化運動が起こり,社会学においても,たんなる個別科学の枠を超えたウェーバー解釈が求められ,組織集団,社会的行為についての哲学的考察が深められるようになった。今日では社会哲学は,ルカーチ流の社会存在論として,アングロ・サクソン系の科学方法論として,フランクフルト学派流の社会批判の理論として,それぞれの哲学概念に応じて多彩な展開をみせている。社会哲学は社会科学の成果を摂取しつつも,それを批判し統合し,基礎づけるものとして,独自の,哲学としても不可欠の意義をもつ。
社会科学
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社会哲学」の意味・わかりやすい解説

社会哲学
しゃかいてつがく
social philosophy

社会生活を全体的,包括的に説明しようとする根本的な考察をいう。 T.ホッブズに始る用語といわれるが,明確な学問として成立しているわけではなく,根本的な概念規定も確立していない。 G.ジンメルは,一般社会学,形式 (純粋) 社会学,哲学的社会学の3部から成る社会学体系を構想し,哲学的社会学は,社会学的認識を可能にする前提や基礎概念を扱う社会認識論と,社会学の直接的な対象的知識の範囲をこえる問題や概念と社会学との関係を扱う社会形而上学から成るとしたが,これが社会哲学の内容を示唆している。

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