日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュランベルジェ」の意味・わかりやすい解説
シュランベルジェ
しゅらんべるじぇ
Jean Schlumberger
(1877―1968)
フランスの小説家。アルザスのプロテスタントの家に生まれる。その潔癖で厳しい倫理観を、生活においても文学においても、終生持ち続けた。また、少年時代からジッドの生涯の友であった。早くからペギーが創刊した『半月手帖(はんげつてちょう)』などにおける文学革新の運動に関心を示し、1909年、ジッドの後ろ盾で、コポーらと『NRF(エヌエルエフ)』誌を創刊。またコポーのビュー・コロンビエ座設立にも参画した。20世紀初頭の文学風土の醸成に果たした役割は大きい。『不安な父子関係』(1913)以下、『幸福な男』(1921)、『不実な友』Camarade infidèle(1922)、『年老いたる獅子(しし)』le Lion devenu vieux(1924)、『18歳の眼(め)』(1928)、大作『サン・サチュルナン』(1931)と続く小説作品は、いずれも精緻(せいち)な心理分析と、厳密な描法で書かれたものである。評論には、意志のヒロイズムを扱ったといえる『コルネイユ的楽しみ』Plaisir à Corneille(1936)、友とその妻を描く『マドレーヌとアンドレ・ジッド』Madeleine et André Gide(1956)がある。
[小林 茂]