コポー(読み)こぽー(英語表記)Jacques Copeau

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コポー」の意味・わかりやすい解説

コポー
Copeau, Jacques

[生]1879.2.4. パリ
[没]1949.10.20. ブルゴーニュ,ボーヌ
フランスの演出家。パリの貴金属細工商の家に生れた。 A.ジッドに認められて文芸批評を行い,1909年『新フランス評論NRFの創刊に参画,その主筆となったが,11年『カラマーゾフの兄弟』の脚色をしたことから,演劇改革運動を決意,13年ビュー=コロンビエ座を創立,商業主義を排して芸術としての品位と純粋性をそなえた演劇を目指した。戯曲を重視するとともに,G.クレイグや A.アッピアの流れをくむ造型的で簡潔な演出によって主としてモリエールシェークスピアの作品で成功を収めた。第1次世界大戦後演劇学校をつくり,24年その生徒とともにブルゴーニュの田舎に引きこもり,理想の演劇の実現をはかった (→コポー一座 ) 。 36年コメディー・フランセーズの演出に参与,40年には監督に就任したが,ナチス干渉を快しとせず翌年辞任,再びブルゴーニュに引きこもった。著書に『ビュー=コロンビエ座の回想』 Les Souvenirs du Vieux-Colmbier (1931) ,『民衆演劇論』 Le Théâtre populaire (41) などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コポー」の意味・わかりやすい解説

コポー
こぽー
Jacques Copeau
(1879―1949)

フランスの演出家、俳優。20世紀初頭のフランス演劇の革新者。パリに生まれる。ソルボンヌ大学に学んだが、早くから劇作、評論の筆をとり、ジッドを中心に創刊された文芸誌『NRF(エヌエルエフ)』の同人となる。1913年、この同人たちを後ろ盾にして、商業主義に毒され堕落した「演劇の再演劇化(芸術化)」を企て、ビュー・コロンビエ座(客席360)を創設する。彼の演出は、戯曲に内在する劇詩人の精神的生命を舞台に具体的に移すことと考え、まずテキストを尊重した。その具現化にあたっては、舞台芸術家クレイグとアッピアに影響され、簡素な常設の「裸の舞台」をつくって、シェークスピア、モリエール、メリメなどの作品の斬新(ざんしん)な演出をし、演劇運動を展開した。この運動はのちにデュラン、ジューベなどに受け継がれた。また、独自の演劇学校をつくり、俳優の教育にあたった。岸田国士(くにお)はここで学び、コポーの精神を日本の新劇運動に移そうとした。

[加藤新吉]

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