ドイツ連邦共和国の第7代連邦首相。モッセンベルク生まれ。労働者階層の出身で、自活しながら弁護士になる。1963年に社会民主党(SPD)に入党、1978年から1980年まで社民党青年部(JUSOS(ユーゾー))議長を経て、1980年から1986年まで連邦議会議員。1990年にニーダーザクセン州におけるSPDと緑の党の連立州政府の州首相に就任、1994年州議会選挙ではSPD単独の州政府を実現した。シュレーダーは、企業家の立場を視野に入れた経済政策を主張した。1998年3月の州議会選挙でさらにSPDの得票率を伸ばし、その直後にSPDの首相候補になった。首相候補シュレーダーは、党首ラフォンテーヌOskar Lafontaine(1943― )とコンビを組み、1998年連邦議会選挙でSPDを勝利に導き、16年ぶりに政権交代を果たした。「90年連合・緑の党」との初の連立政権は、両党のシンボルカラーから「赤と緑の連立政権」とよばれ、選挙戦においてシュレーダーは「新しい中道」を掲げ「雇用、革新(イノベーション)、公正」を訴えた。コール長期政権に飽きた有権者の心を巧みにつかみ、社会的公正とともに経済政策の重視を主張し、SPDの支持基盤を中間層に拡大することに成功した。シュレーダー連立政権においても安保政策やヨーロッパ統合政策については基本的変更はなく、内政では400万人を超える失業者問題の解決を最大の課題とした。さらに、新しい政策として、環境税の導入、脱原発を目標とする新しいエネルギー合意、二重国籍の容認を含む定住外国人の国籍取得を緩和する国籍法の改定を目ざした。2005年9月の総選挙でSPDは僅差(きんさ)ながらキリスト教民主同盟(CDU)に敗れたため、シュレーダーは首相の座をCDUのメルケルに明け渡した。2005年11月政界引退。
[坪郷 實]
ドイツの政治家。キリスト教民主同盟(CDU)所属。ザールブリュッケン生まれ。弁護士出身。1949年以来連邦議会議員。1953~1961年内相、1961~1966年外相、1966~1969年国防相を歴任し、外相在任中は「西ドイツ・フランス協力条約」に署名し(1961)、他方ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、ブルガリアでの通商代表部設置を実現させた(1963~1964)。1969年連邦議会外交委員会委員長に就任し、1972年旧西ドイツの政治家として最初に中国を訪問した。
[深谷満雄]
ドイツの俳優。母はシェーネマン一座の女優ゾフィーSophie Charotte Schröder(1714―92)で、3歳から舞台に出ていたが、母が1749年に俳優アッカーマンと再婚、継父の一座で俳優として活躍した。71年に母とハンブルクで劇場を運営し、シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤(どとう))期の若い作家を取り上げ、ドイツでは最初にシェークスピアの本格的上演にも取り組んだ。81年にはウィーンのブルク劇場の俳優となり、ふたたびハンブルクに戻って劇場を運営した。当時の人気劇作家でもあり、エクホーフに学んだ写実的演技を継承、完成し、俳優年金制度の確立のためにも努力した。
[岩淵達治]
ドイツの詩人。ブレーメン生まれ。人文主義とキリスト教を精神的土台として、叙情詩をはじめ散文、翻訳などに優れた業績を残す。叙情詩人としては審美主義から出発したが、つねに古典に範を求め、かつゲーテやヘルダーリンの伝統を継承しつつ、宗教的叙情詩に新生面を開く。『宗教詩百編』(1951)に代表される数多くの宗教詩は新教賛美歌の再興に寄与した。散文ではまた詩人の政治的、宗教的責任を再三問いかけている。翻訳はホメロスなどの古典、シェークスピア、フランス古典劇と広範囲に及び、その訳文は美的感覚と言語能力の豊かさに裏打ちされた格調の高さで定評がある。
[根本道也]
ドイツの俳優,座主。はじめアッカーマンの劇団で俳優稼業,1771年以降3度にわたってハンブルクの劇場を主宰(1771-80,1795-98,1811-12),この間ウィーンのブルク劇場の支配人(1781-85)。せりふとしぐさの自然らしさを追求した最初のドイツ俳優として名高い。シェークスピア戯曲を翻案してドイツの劇界に導入した功績は大きい。彼はまたシュトゥルム・ウント・ドラング期の作家たち(F.M. クリンガー,J.M.R. レンツなど),レッシングの市民悲劇《エミーリア・ガロッティ》を演出した。とりわけ《ハムレット》による成功は,ドイツ演劇史上画期的な事件であった(1776)。みずからも若干の市民劇を書いた。またドイツ最初の俳優のための養老施設をつくった。
執筆者:宮下 啓三
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