メキシコ、モレロス州の州都クエルナバカの西方40キロメートルの地点にある祭祀(さいし)センターの遺跡。テオティワカンの影響もみられるが、その支配下に入った形跡はなく、それが没落したあと、7~9世紀に栄えた。丘陵上につくられ、濠(ごう)や塁壁を備えた防砦(ぼうさい)的構造をもつ。主要神殿の基壇側壁は、羽毛のある蛇すなわちケツァルコアトルと、マヤ的な特徴をもつ神官の坐像(ざぞう)の浮彫りで飾られている。球戯場も、コパンやコバーなどマヤ古典期遺跡のそれとよく似た構造をもつ。ピラミッドの南30メートルにある遺構の複合体は「石碑(エステラ)の神殿」を含み、そこからは、雨の神トラロック、太陽神とその配偶者を刻んだ、高さ180センチメートル弱の石碑が3本みつかっている。これらの神々の表現は、古典期中ごろの海岸低地の祭祀センターによくみられるものであり、エル・タヒン、ビルバオ、パレンケなどとのつながりが暗示されている。
ショチカルコの栄えた時代はマヤ古典期後期にあたる。メキシコ中央高原では、この時期トラスカラ州のカカストラやイダルゴ州のトゥーラなどにマヤ的な特徴が現れているが、太平洋岸から、ゲレーロ、モレロスを経由して浸透してきたといわれるマヤ文化の影響を考察するうえで、ショチカルコの存在は重要である。10世紀初めの衰退も、メソアメリカ全体におこった通商システムや諸祭祀センターの変動と関連があると考えてよい。
[増田義郎]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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