日本大百科全書(ニッポニカ) 「トルテカ文化」の意味・わかりやすい解説
トルテカ文化
とるてかぶんか
テオティワカン文化の滅亡後、10~12世紀にメキシコ中央高原とその隣接地方に覇を唱えたトルテカTolteca人の文化。彼らが一つの民族を構成していたかどうかについては絵文書その他の歴史伝承間に矛盾があり、研究者間でも異説がある。トルテカ文化の中心地はトゥーラ遺跡であるが、そのほかにもトゥーラの名を冠する遺跡(トゥーラ・ショチカルコ、トゥーラ・テオテナンゴなど)があり、テオティワカン滅亡後各地にいくつもの民族集団が中心地を築き、トルテカを自称したものらしい。いずれも10~11世紀が最盛期で、その後、北方からのチチメカ諸族の侵入により滅亡した。ケツァルコアトル信仰、三脚付き彩色土器(コヨトラテルコ式、マサパン式)、階段状ピラミッド形基壇、石柱、チャクモルとよぶ石彫、大規模な人身供儀(ひとみくぎ)、球戯場、銅細工などが特徴的要素で、冶金(やきん)術はトルテカ文化の時代にメキシコ高原に広まったと考えられている。
[大貫良夫]