ジャクソニアン・デモクラシー(読み)じゃくそにあんでもくらしー(英語表記)Jacksonian Democracy

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ジャクソニアン・デモクラシー
じゃくそにあんでもくらしー
Jacksonian Democracy

アメリカ合衆国第7代大統領ジャクソンの民主的業績を評価し、彼の時代の改革運動を総括する概念。1820年代から40年代にかけてのいわゆる「ジャクソン時代」に、産業革命と西部開拓の進展によって人口が急激に流動化し、名望家支配が動揺して民衆運動ないし民衆扇動が各地で展開した。とくに北部では、労働組合運動、勤労者党の運動、フリーメーソン追放運動、奴隷解放運動、第二次信仰復興運動、ロード・アイランド州の選挙権拡大を求めるドアーの乱(1842)、ニューヨーク州地代反対一揆(いっき)などが続発した。この間、白人男子普通選挙制が諸州に普及し、政党運営もコーカス(議員集会)制から党大会制へと移行した。しかし、これらの動きはジャクソン政治の成果ではなく、むしろ彼が対応を迫られた対抗勢力ないし政治的与件であった。ジャクソン自身のもっとも強固な政治的基盤は南部の奴隷主階級にあったし、彼はインディアンの強制移住や労働運動の武力弾圧の先例をもつくった。さらに反独占の名の下に強行された合衆国銀行打倒政策も、結局ウォール街の大銀行の協力を得て遂行されたのである。したがって、「ジャクソン民主主義」という概念は、1950年代までは確固とした通説地位を保っていたが、以後その概念構成が疑問視されるようになり、今日のアメリカの歴史学界ではこの用語を避ける歴史家が多くなっている。

[安武秀岳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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