だんつう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

だんつう
だんつう / 緞通

床用の敷物のうち手織りの高級なものをだんつうとよぶ。中国語のタンツ(毯子)から出た語である。地糸に指先でひと目ひと目毛を結び付けたあと、刃物で切りそろえて立毛(りつもう)にするので、きわめて手のこんだ織物である。これを織るには竪機(たてばた)を使う。[小原二郎]

歴史

紀元前の古い時代にメソポタミアからナイルに至る中近東地域で、遊牧民族はヒツジの毛からフェルトをつくって移動生活に使っていた。だんつうはそれから生まれたという。中央アジアの楼蘭(ろうらん)から4世紀以前の立毛の厚地織物が発掘されたが、それはおそらくイラン地方から運ばれたと考えられている。この技術はその後イランからシルク・ロードを通って中国に入り、いわゆる支那(しな)緞通の起源となった。それが朝鮮半島を経て、日本には元禄(げんろく)年間(1688~1704)に佐賀藩に伝わり、鍋島(なべしま)緞通の始まりとなった。のちに天保(てんぽう)年間(1830~44)に和泉国の堺(さかい)において堺緞通が織り始められたが、現在はその名残(なごり)をとどめるにすぎない。そのほか播磨国赤穂(あこう)でもだんつうがつくられていた。また山形地方からも優秀なだんつうを産するが、それは昭和初期に中国の天津(てんしん)緞通の技術が伝えられて生産が始まったものである。
 一方、ヨーロッパへのルートは二つあった。一つは西に向かった経路で、エジプトを経てヨーロッパに渡った。もう一つは北に向かってポーランドを経て、スカンジナビアに伝わったとされている。
 世界でもっとも優れただんつうの産地は西南アジアで、13世紀にここを通ったマルコ・ポーロの見聞録にもだんつうの記録があるという。ベネチアの商人たちはこれを輸入してヨーロッパに運んだ。それが普及してヨーロッパでは、石造りの家の中を和らげる室内装飾の備品として、欠くことのできないものに発展していったのである。[小原二郎]

生産と品質

だんつうの代表的な生産は現在でもイランを中心とする中近東地区、ならびにインドの北部地方である。それぞれの地方ごとに特色があり、品質は立毛の材料と織り方ならびに文様と色調によって左右される。立毛には梳毛糸(すきげいと)、紡毛糸(つむぎげいと)、絹糸、綿糸などの撚(よ)り合せ糸が使われる。また糸の結び方には、ペルシア結び、トルコ結び、シングル結びの3種がある。
 文様には植物文、動物文、幾何学文などがあるが、宗教との関係で使い方が違っている。たとえばイスラム教国に属する所では動物文は織らない、といったようなことである。イラン北部地域のものは、伝統ある細密な図柄を長い歳月をかけて織り上げたものが多く、実用品というよりも美術品として高く評価されている。全体を通して図柄や色調に特徴があるので、製品を見れば産地を判断できるものが多い。
 だんつうは一枚物としてつくられるので、室内では置き敷きとして使われることになる。ヨーロッパでは最近、広い部屋の中に何枚かのだんつうを乱れ敷きにする使い方が、高級な住宅でみられるようになった。[小原二郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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