コインを投入しボタンを押して選曲できるレコードの自動演奏装置。コイン作動となっているのは,飲食店などで客に使用させる目的で考案されたものだからである。〈ジューク〉とは酒場や娼家を意味するアメリカ黒人の俗語だとされている。もともと〈蓄音機〉は家庭用として普及する前に見世物の用に供せられた。1890年代には,アメリカや西欧の大都市で蠟管蓄音機をイアホンを用いて有料で聞かせる商売が広まった。1906年にアメリカのジョン・ゲーブル社が平円盤レコードの自動演奏機を発売したが,一般にこれがジュークボックスの元祖とされている。しかし本格的に普及したのは1927年にシカゴのAMI社(Automatic Musical Instrument Co.)が電気増幅装置付きの機種を発表,他の数社がこれに追随してからのことで,以後48年まで,78回転SP25センチ盤を24枚まで収録(両面演奏で48曲)のジュークボックスが,ワーリッツァー,シーバーグ,ロックオラ,AMIなど各社で製造された。SP時代のジュークボックスの最高傑作と定評のあるワーリッツァー1015型は,46年から翌年にかけて5万6000台生産された。これらは販売されるのでなく,レストラン,酒場などに賃貸されるのが原則であった。50年代に入ると45回転17センチのドーナツ盤使用の機種に切り替わり,収録曲数200曲程度まで増え,若者向きのポピュラー音楽のメディアとして大きな役割を果たしたが,60年代以降,急速に衰退した。日本では第2次世界大戦後,アメリカの大衆文化の輸入とともに,都会のダンスホールやバー等で流行した。
執筆者:中村 とうよう
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
内部にたくさんのレコードが収納してあり、硬貨(コイン)を投入することで希望するレコードを自動的に演奏することができる装置。このような仕掛けの発想は、エジソン式蝋管(ろうかん)レコードの時代にすでにあり、1889年パシフィック・フォノグラフ社のルイス・グラスLouis Glassが、蝋管レコードを使った自動演奏装置をサンフランシスコに設置した記録がある。近代的なジュークボックスは、1927年にオートマチック・ミュージカル・インスツルメント社(AMI)が発売して成功し、多くのメーカーがこれに追随して全米に広まった。初めはSPレコードを用いていたが、1949年に45回転シングルレコードが発売されると、レコードはこれに移行した。演奏時、レコードは垂直状態で回転し、レコードの両側に用意された二つのピックアップを選択することにより、どちらの面も演奏できるようになっているものが多い。一つのコインで1曲を指定するだけでなく、複数のコイン、あるいは紙幣で複数のレコードを予約することができる機能をもつものもある。レコード収納数は、初めは数十枚程度であったが、後には数百枚から数千枚に及び、客の要望に広くこたえられるようになり、ホテル、ナイトクラブ、ディスコなどに普及した。日本には第二次世界大戦後、アメリカ駐留軍が持ち込んだものが始まりで、1950年代なかばから1970年代にかけて普及した。カラオケなど新しい音楽の楽しみ方が現れると、客の好みも変わり、直接レコードを演奏する形式のジュークボックスは廃れていった。外国でも従来型のジュークボックスは姿を消したが、シングルレコードにかわってコンパクトディスク(CD)を使うジュークボックスが商品化され、さらにインターネットを使って音楽をダウンロードし、つねに最新の曲に更新することができるデジタル方式のジュークボックスが登場するなど、新しいジュークボックス市場が形成されつつある。
[吉川昭吉郎]
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