テチス海(読み)テチスカイ(その他表記)Tethys Sea

デジタル大辞泉 「テチス海」の意味・読み・例文・類語

テチス‐かい【テチス海】

Tethys Sea古生代後期から新生代第三紀にかけて、北側のアンガラ大陸と南側のゴンドワナ大陸の間に存在した海洋。現在の地中海周辺からヒマラヤを経て東南アジアに広がっていた。アルプスヒマラヤ山脈の地層中から、当時の生物の化石が産出する。古地中海。テティス海。テーチス海。

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精選版 日本国語大辞典 「テチス海」の意味・読み・例文・類語

テチス‐かい【テチス海】

  1. ( テチスは Tethys ギリシア神話中の水神オケアノスの妻の名から ) 地質時代、古生代末期から新生代第三紀にかけて、アンガラ大陸を含む北半球ユーラシア大陸と南半球ゴンドワナ大陸の間にあった海。現代の地中海周辺からヒマラヤを経て東南アジアに広がっていた。古地中海。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「テチス海」の意味・わかりやすい解説

テチス海
てちすかい
Tethys Sea

古生代デボン紀末から新生代古第三紀まで、地中海周辺域から中央アジア、ヒマラヤを経て東南アジアまで続いていた海域。古地中海ともよばれている。テチス海は、北側のローラシア大陸(現在の北アメリカ、ユーラシア大陸)、南側のゴンドワナ大陸(現在のアフリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極大陸とインド)に挟まれた海域であり、両側から砕屑(さいせつ)物を供給されていた。テチス海は古第三紀に両大陸の衝突により、大部分の海域が閉塞(へいそく)し、アルプス‐ヒマラヤ造山帯を形成した。とくにヒマラヤ山脈は北側のローラシア大陸に、南側のゴンドワナ大陸から分離したインドが衝突して形成されたものである。この造山運動はアルプス造山運動とよばれている。

 テチス海域ではどの地域でも紡錘虫アンモナイトサンゴなどの動物群が共通しており、テチス動物群とよばれている。また動物群の類似からテチス海は、日本など環太平洋の海域につながっていたことが明らかになっている。

[村田明広]

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改訂新版 世界大百科事典 「テチス海」の意味・わかりやすい解説

テチス海 (テチスかい)
Tethys Sea

フェノサルマチア(バルト楯状地とロシア台地を合わせた地域)やアンガラ大陸を含む北方のユーラシア大陸と,南方ゴンドワナ大陸との間に広がっていた地質時代の大地中海に対してE.ジュース(1901)が与えた名称。ギリシア神話の水神オケアノスの妻テテュスの名にちなむ。古生代より新生代第三紀にかけて存在し,各時代にテチス動物群として知られる特有な暖海性生物群を産する。古生代二畳紀のネオシュワゲリナ(フズリナ)-ワーゲノフィルム(サンゴ)-レプトダス(腕足類)動物群などはこの例である。テチス海は結局テチス動物群の分布海域としてとらえられるが,二畳紀にはその範囲は西はチュニジア,シチリア島,バルカン半島から中近東諸国を経て,パキスタン,ミャンマー,マレーシア,インドネシア,ニュージーランド,インドシナ,中国,日本,ロシアの沿海州から東は北アメリカ西海岸にまで及んでいた。中生代のテチス海はこれよりは狭くなるが,熱帯あるいは亜熱帯の海域であったと考えられ,各地に造礁サンゴが生育していた。日本では四国のジュラ紀鳥巣石灰岩,北海道の白亜紀オルビトリナ石灰岩がテチス海のサンゴ礁堆積物の例である。古い時代のテチス海については,古生代前期にはプロテチスあるいはプロトテチス,古生代後半ではパレオテチスとよばれることがある。現在世界有数の産油地帯である中近東は,中生代から新生代第三紀にかけてテチス海の一部であった。バリスカン,アルプス両造山運動の影響をうけ,最終的には第三紀中新世にゴンドワナ大陸がアンガラ大陸に衝突し,これにのし上げることによってテチス海は消滅した。現在の地中海や黒海,カスピ海,アラル海などは,テチス海のなごりであるとしてパラテチスといわれる。
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百科事典マイペディア 「テチス海」の意味・わかりやすい解説

テチス海【テチスかい】

古生代後期から新生代第三紀にかけて,北のアンガラ大陸と南のゴンドワナ大陸を隔て,東西に伸びていた海。北はアルプス,カルパティア,カフカスの諸山脈,南はアトラス山脈までが海域であって,東は東南アジア地域で当時の太平洋に連なっていた。これは,この地域の海生生物の化石が共通で(テチス動物群),南北両側の陸生植物化石が異なる事実から推定される。日本の中生代海生生物化石にもテチス海地域と共通なものがある。テチス海は中生代のアルプス地向斜の海でもあり,アルプス造山運動の過程で種々変化し,第三紀中新世にゴンドワナ大陸がアンガラ大陸に衝突してのし上がったため消滅した。現在の地中海や黒海などはそのなごり。
→関連項目地中海

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テチス海」の意味・わかりやすい解説

テチス海
テチスかい
Tethys Sea

古地中海ともいう。古生代後期から新生代前半にかけての長期間,現在の地中海地域から,カフカス山脈,ヒマラヤ山脈などの地域を通り,東南アジアや中国南部,日本列島にかけての細長い地域は,だいたいにおいて浅い海域であった。この海域はテチス海と呼ばれる。この海の北側はアンガラ大陸,南側はゴンドワナ大陸が広がっていた。この海は地向斜で,厚い堆積物が形成され,中生代末期から新生代にかけて,次々と造山運動を受け,アルプス山脈やヒマラヤ山脈など大規模な褶曲山脈が形成されていった。この海域に生息した海生無脊椎動物は,いずれも共通性があり,同じ化石動物群を含み,東の延長は北アメリカの西海岸に達している。

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世界大百科事典(旧版)内のテチス海の言及

【アメリカ】より

…同じころ,南アメリカ大陸は,アフリカ大陸,南極大陸などと一連の超大陸ゴンドワナをなしていた。両超大陸の間には,古生代~中生代を通じてテチス海と呼ぶ広い海が開いていたが,それ以前は両者は西端で合体し,パンゲアという超大陸をつくりあげていた。 白亜紀ころから大西洋が開きはじめ,北アメリカ大陸はユーラシア大陸から離れて西進し,また南アメリカ大陸もアフリカと切れて西に向かって移動し始めた。…

【アルプス・ヒマラヤ地帯】より

…このような形成史はヒマラヤ山脈でも同様で,古第三系以下の地層群がアルプスより大規模なデッケン構造をつくっている。現在のアルプス・ヒマラヤ地帯は,古生代以後古第三紀に至るまで,北半球のローラシア大陸と南半球のゴンドワナ大陸との間に,東から西へくさび状に入りこんだテチス海とよばれる広い海域であった。中生代以降にゴンドワナ大陸の分裂が始まり,その破片であるアフリカ,インド半島,オーストラリアなどの各大陸が北に移動を始めた。…

【古生代】より

…地質時代の一区分で,顕生累代Phanerozoic eons最初の代。年代でいうと,今から約5億9000万年前から約2億4800万年前までの,およそ3億4200万年間に相当する。表のように六つの紀periodに区分されている。なお,石炭紀の場合,アメリカではこれを二分し,下位のミシシッピ紀Mississippianと上位のペンシルベニア紀Pennsylvanianとすることが多い。 古生代の特色は,地質時代において最初に硬組織hard tissue,すなわちキチン質や石灰質の骨格構造(主として殻)をもつ顕微鏡サイズより大型の生物が出現したことである。…

【地中海】より

…一般には,地中海といえばヨーロッパ地中海をさし,狭義でのヨーロッパ地中海(ラテン語では内海Mare Internumと呼ばれていた)は,ヨーロッパ南岸,アジア西岸,アフリカ北岸に囲まれ,面積約297万km2,東西3860km,南北700kmに及び,西はジブラルタル海峡で大西洋に,北はダーダネルス海峡でマルマラ海に,南東部ではスエズ運河を通じ紅海と結ばれている。
【地中海地域の自然と生活】

[地中海の形成と地形]
 地質学的にみると,地中海は現在の旧世界の部分に,石炭紀から第三紀初頭にかけて(約3億~5000万年前),東西にひろくのびた形で存在していたテチス海の最大の残存であって,第三紀以降のユーラシア大陸の造山運動によって,この海は分断され狭められたのである。地質学的なタイム・スケールからみれば,ジブラルタル海峡は狭められつつあるということができる。…

※「テチス海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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