ジョチュウギク(読み)じょちゅうぎく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョチュウギク」の意味・わかりやすい解説

ジョチュウギク
じょちゅうぎく / 除虫菊
[学] Tanacetum cinerariifolium (Trevir.) Sch. Bip.
Chrysanthemum cinerariifolium (Trevir.) Vis.

キク科(APG分類:キク科)の多年草。シロバナムシヨケギクともいう。バルカン半島ダルマチア地方原産。茎は束生し高さ60センチメートルほどになる。根出葉には長い葉柄があるが、茎の上のものほど葉柄は短い。葉は2~3回羽状に全裂し、裂片は細い。6月ごろ長い花茎を出し、径3センチメートルほどの頭状花をつける。頭状花は外側に15~20の白色の舌状花が並び、中央には多数の黄色の管状花がある。開花した花を摘み取り、乾燥したものが日本薬局方の除虫菊で、粉末にして殺虫剤とするほか、蚊取り線香、蚤(のみ)取り粉、農薬の原料とする。殺虫成分ピレトリンシネリンで、0.8~1.3%含まれる。日本には明治初年に渡来し、1943年(昭和18)ころまでは世界第一の生産国で、その90%が輸出され、重要な特産品の一つであった。主産県は和歌山で、愛媛、岡山、広島、北海道も産地であった。現在は観光用にわずかに栽培されているにすぎない。現在、世界第一の生産国はケニア。日本での栽培法の一例を示すと、9月下旬に苗床播種(はしゅ)、10~11月か翌年4月に定植し、その次の年の5~6月に開花する花を摘み取る。近縁アカバナムシヨケギクT. coccineum (Willd.) Grierson(C. coccineum Willd.)、コーカサスムシヨケギクT. caucasicum Sch.Bip.(C. caucasicum Whn.)も殺虫成分のピレトリンを含むが、含有率がジョチュウギクに比べて低く、花の収量も少ないので、日本では観賞用とされる。

[星川清親 2022年2月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジョチュウギク」の意味・わかりやすい解説

ジョチュウギク(除虫菊)
ジョチュウギク
Chrysanthemum cinerariifolium; pyrethrum

キク科の多年草。一名シロバナムシヨケギク。バルカン半島のダルマチア地方原産。日本では瀬戸内海周辺や北海道で多く栽培される。茎は高さ 30~60cmで全体に白い絹毛におおわれる。葉は2,3回羽状に裂け,裂片は細長い線形。5~6月頃,長い花柄の先に径約 3cmの頭状花をつける。周辺に白色の舌状花が 15~20個並び中央は黄色の管状花から成る。花を乾燥したものには殺虫力があり,有効成分はピレトリンである。粉末にしてかつては蚤取り粉など殺虫剤として広く使用された。また蚊取り線香の原料として現在も使われている。

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