日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョング」の意味・わかりやすい解説
ジョング
じょんぐ
Erica Jong
(1942― )
アメリカの女性作家。ニューヨークの裕福なユダヤ系の家庭に生まれる。旧姓はマン。ジョングは中国系の精神科医との結婚後の姓。バーナード大学卒、コロンビア大学修士。ニューヨーク市立大学などいくつもの大学で教職につく。シルビア・プラス、アン・セクストンAnne Sexton(1928―1974)ばりの告白調の詩人として出発し、『果実と野菜』(1971)を皮切りに9冊の詩集がある。女性の立場から性の世界を大胆率直に、知性とユーモアを込めて描いた自伝的な大ベストセラー小説『飛ぶのが怖(こわ)い』(1973)によって世界的な名声を獲得した。男性があたりまえと考えるような自由を女主人公に与え、真摯(しんし)な自己探求の旅をさせることによって、世界中の女性の琴線に触れたのだといわれる。『あなた自身の生を救うには』(1977)はその続編。『ファニー』(1980)は、学生時代に耽読(たんどく)した18世紀英国小説のスタイルを模してジョン・クレランドJohn Cleland(1709―1789)の好色本『ファニー・ヒル』(1748~1749)を女性の視点からとらえ直したパロディー小説。ほかに『パラシュートとキス』(1984)、『セレニッシマ、ベニス物語』(1987)、『女のブルース』(1990)、『五十が怖い』(1994)がある。
[寺門泰彦]
『柳瀬尚紀訳『ファニー』上下(1985・新潮社)』▽『青山みゆき訳『エリカ・ジョング詩集』(1993・土曜美術社出版販売)』▽『亀井よし子訳『五十が怖い』上下(1996・小学館)』▽『道下匡子訳『セックスとパンと薔薇――21世紀の女たちへ』(2001・詳伝社)』▽『柳瀬尚紀訳『飛ぶのが怖い』『あなた自身の生を救うには』(新潮文庫)』▽『柳瀬尚紀訳『ブルースを、ワイルドに』上下(文春文庫)』