資金決済などに必要な金融情報を安全かつ迅速に通信できるよう運営している国際協会の略称。正式名称は国際銀行間通信協会Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationで、英語の頭文字をとってSWIFT(スイフト)とよばれる。swiftという英単語には「快速の」「即座の」などの意味があり、膨大な国際決済業務を「速やかに」処理するという意味も込められている。1973年に世界各国の金融機関が出資して設立した協同組合組織で、本部をベルギーの首都ブリュッセル近郊のラ・ユルプLa Hurpeに置く。2021年時点で、世界200以上の国・地域の1万1000を超える銀行、証券会社などに、国際金融取引のインフラである通信網を提供し、送金、外国為替(かわせ)、証券取引、デリバティブに伴う金融情報の通信を担っている。金融機関だけでなく、国際的に活動する事業会社も利用している。安全で迅速な通信に欠かせないコンピュータや機器を扱う企業の認定のほか、取引様式やデータ処理の共通・標準化、通信料金の引下げなどに取り組んでいる。また、主要国の意向を受けて、国連決議に反する核・ミサイル開発や侵略などを行った国の金融機関を決済網から排除する制裁を実施。2017年に北朝鮮、2018年にイラン、2022年にウクライナに侵攻したロシアの金融機関を排除した。なお、スイフトは国際条約に基づく機関ではないため、ベルギー国立銀行を首席として、主要11か国の中央銀行とヨーロッパ中央銀行(ECB)が協力してスイフトを監督している。
経済のグローバル化に伴い、スイフトが提供する送金などの通信量は2021年に約150億件と、20年前の約10倍に膨らんだ。今後、世界経済に占めるアジア、アフリカの比重が高まるにつれ、両地域での金融通信網整備が課題となる。なお、スイフトは世界最大級の国際金融会議「サイボスSibos」を毎年主宰しており、2012年(平成24)には日本で初めて大阪市で開催した。
[矢野 武 2022年8月18日]
(谷口義明 愛媛大学宇宙進化研究センターセンター長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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