消化管粘膜内に存在する分泌細胞から分泌されるホルモンの総称で,ポリペプチドホルモンである。消化管が食物の消化・吸収のみならず,内分泌機能を営んでいることが明らかになったのは,1902年のベーリスW.M.BaylissとスターリングE.H.Starlingによるセクレチンの発見に始まる。ついで05年にガストリンが発見されたが,現在,消化管ホルモンとして上記の二つのほかにコレシストキニン-パンクレオチミンcholecystokinin-pancreozymin(CCK-PZ),GIP(gastric inhibitory polypeptide,胃酸分泌抑制ペプチド),VIP(vasoactive intestinal polypeptide,血管作動性腸管ペプチド),モチリン,ソマトスタチンなどが知られている。最近では,これらの消化管ホルモンが脳内にも存在することがわかり,また逆に脳で発見されたホルモンが消化管にも存在することが判明したので,これらのホルモンは脳-腸管ペプチドbrain-gut peptideと呼ばれることもある。消化管ホルモンの生理的な役割は,消化管機能,たとえば胃酸や膵酵素,胆汁などの分泌や,粘膜血流,さらに消化管の運動などを調節することにあり,それぞれのホルモンは自律神経の作用と共働して消化管機能の調節を行っている。
→ガストリン →セクレチン
執筆者:屋嘉比 康治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
消化管,主として胃,十二指腸および小腸上部の腺細胞で生産され,食物などの刺激により血液中に内分泌され,消化管に作用し,消化液の分泌や運動機能を調節するホルモンをいう.セクレチン,ガストリン,コレシストキニン,エンテロガストロン(enterogastrone),モチリン(motilin)などが知られており,ポリペプチドである.セクレチンは27,ガストリンは17,コレシストキニンは33個のアミノ酸残基から構成されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…また絨毛表層の杯細胞からは粘液が分泌される。(b)消化管ホルモン 小腸粘膜には消化管ホルモン分泌細胞があり,これらから種々のホルモン(セクレチン,コレシストキニン‐パンクレオザイミン,GIP,VIP,モチリンなど)が放出され,消化管の分泌と運動が調節される。(2)運動 小腸には蠕動(ぜんどう)運動,その他の運動がみられる。…
…主としてインシュリン(膵島のB細胞から),グルカゴン(同じくA細胞から)などの糖代謝に関係するホルモンを血液中に分泌している。
[膵液分泌と消化管ホルモン]
食物が胃の中に入ると,胃の幽門部から消化管ホルモンであるガストリンが血液中に放出され,それが胃粘膜の塩酸を分泌する細胞に働いて塩酸を出させるため,胃内は酸性となる。胃内の食物はこの酸性の状態で働くペプシンというタンパク質分解酵素によりある程度消化される。…
… 食事を摂取すると胆囊は収縮し,胆汁を十二指腸へ送り出す。この仕組みは,食物中に含まれるある種のアミノ酸,脂肪酸の刺激により十二指腸あるいは空腸上部の腸管壁からコレシストキニン(CCK)という消化管ホルモンが分泌され,これが直接胆囊壁の平滑筋に作用して収縮をおこすことによる。もっとも,胆囊は空腹時においても一定のリズムで軽い収縮と拡張を繰り返していることも知られており,この仕組みはまだ完全に解明されてはいない。…
…(6)胃腸 胃の幽門部,十二指腸,小腸始部にホルモンを分泌する細胞が散在している。これらのホルモンをまとめて胃腸ホルモン(または消化管ホルモン)といい,その中のいくつかは脳にも検出される。(7)副腎 副腎は哺乳類ではステロイドを生産する皮質組織とカテコールアミンを生産する髄質組織に分けられるが,下等脊椎動物では,ステロイド生産組織とカテコールアミン生産組織が,別々に存在したり混在したりする。…
※「消化管ホルモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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