イランの伝統的な楽器で,洋梨を縦割りにした形の接木胴に約65cmの細長い棹が付いたリュート属の撥弦楽器。この名はペルシア語で〈三弦〉を意味し,本来は三弦をもっていたと考えられるが,今日のセタールは4本の金属弦をもっている。しかし第3弦はドローン弦として近年付加されたもので,本来の〈三弦〉の性格は現在も保たれている。これは中世において広く用いられた弦楽器タンブールの一変種と考えられ,この楽器はドタール(二弦)やタールtār(弦)と類縁関係にある。棹にはガットを巻き付け結んだ可動フレットが25ヵ所にあり,糸巻は棹の左側(奏者に面した側)から2本,正面から2本差し込まれている。古典音楽に用いられ,人差指の爪を長く伸ばしてじかに撥奏する。
執筆者:柘植 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イランのリュート属撥弦(はつげん)楽器。「セ」は数字の「三」を、「タール」は「弦」を意味する。響板を張った椀(わん)型の小さな共鳴胴と細長い棹(さお)をもち、棹には、25~27か所にガット弦を巻いた可動フレットがある。19世紀中期以降、4本の金属弦が張られるようになったが、1本はドローン弦で、本来の三弦の性格は保たれている。調弦はC3―C4―G3―C4が基本である。古典音楽の独奏や歌の伴奏に用いられ、右手人差し指を細かく振動させて爪(つめ)でじかに弦をはじく奏法や、左手指で棹上の弦をたたいたりはじいたりする技法が特徴的で、これによりきわめて微細かつ多彩な装飾的リズムパターンが生み出される。
[山田陽一]
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