ソフト・マシーン(読み)そふとましーん(その他表記)Soft Machine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソフト・マシーン」の意味・わかりやすい解説

ソフト・マシーン
そふとましーん
Soft Machine

イギリスのプログレッシブ・ロック・バンド。カンタベリー・ミュージックの代表的グループ。カンタベリー・ミュージックはジャズ的要素の濃い芸術志向の強いプログレッシブ・ロックで、ソフト・マシーンの初期に顕著だったイギリスのインテリ層特有のユーモア感覚を特徴とする。またこの言葉は、カンタベリー出身のミュージシャンたちの交流を指すこともある。

 ソフト・マシーンは1966年に結成。オリジナル・メンバーはロバート・ワイアットRobert Wyatt(1944― 、ボーカルドラム)、マイク・ラトリッジMike Ratledge(1943― 、キーボード)、ケビン・エアーズKevin Ayers(1944―2013、ボーカル、ベース)、そしてオーストラリア生まれのデビッド・アレンDaevid Allen(1938―2015、ボーカル、ギター)の4人である。それ以前の1963年に、ワイアットとエアーズは、カンタベリーのサイモン・ラングストン・スクールの仲間たちを核にしたワイルド・フラワーズというバンドを結成していた。ワイルド・フラワーズのメンバーのリチャード・シンクレアRichard Sinclair(1948― 、ボーカル、ベース)は、1968年にキャラバンを結成し、以後カンタベリー・シーンの一翼を担っていった。ソフト・マシーンというバンド名は、ビート派やヒッピー・カルチャーと深く関わっていたアレンの提案により、ウィリアム・バローズの小説のタイトルからとられたものである。

 結成当初のソフト・マシーンは、ピンク・フロイドなどとの交流の中で、サイケデリックな傾向をもつ前衛的なポップ・ロックを演奏し、1967年2月にデビュー・シングル「ラブ・メークス・スウィート・ミュージック/フィーリン・リーリン・スクィーリン」を発表。しかしアレンがドラッグおよびビザの問題で国外退去となってバンドを脱退トリオになって1968年ファースト・アルバム『ソフト・マシーン』を発表。しかし今度はエアーズが脱退したため、代わりにワイルド・フラワーズのメンバーだったヒュー・ホッパーHugh Hopper(1945―2009、ベース)が加入、1969年に2作目『ヴォリューム・2』を発表した。ヒッピー色の強いサイケデリック・ポップ的世界を展開した前作に比べ、ジャズ色が濃くなり、アンサンブルも飛躍的に伸縮自在かつ洗練されたものとなる。キング・クリムゾンに先駆け、そしてキング・クリムゾンとはタイプの異なるプログレッシブ・ロックの一つの土台を作った傑作だった。そしてそのジャズ指向は、サックス奏者エルトン・ディーンElton Dean(1945―2006)などが加わった1970年のサード・アルバム『3RD』、1971年の『4th』でさらに強化されていったが、シリアスで抽象性の高いフリー・ジャズへの傾斜に伴い、今度はワイアットが居場所を失い脱退。以後、バンドの主導権がディーン、さらに彼の脱退を受けて入った元ニュークリアスのキーボード、オーボエ奏者カール・ジェンキンズKarl Jenkins(1944― )へと移ってゆくのに伴って、ジャズ・ロックやフュージョン的サウンドへと変化していった。そのピークは1975年の『バンドルズ』、1976年の『ソフツ』などである。そしてバンドは、ほとんど瓦解状態にあった1981年に『ランド・オブ・コケイン』をリリースした後、完全に解散した。

 『4th』以降にソフト・マシーンに出入りした多くのメンバーの中には、後にジョン・ウェットンJohn Wetton(1949―2017)などとUKを結成するギタリストのアラン・ホールズワースAllan Holdsworth(1946―2017)や、カーブド・エアのダリル・ウェーDarryl Way(1948― 、バイオリン)が結成したバンドで名を上げたジョン・エスリッジJohn Ethridge(ギター)、後にフェアポート・コンベンションほかのトラッド・フォーク系バンドで活躍するバイオリン奏者リック・サンダースRic Sandersなどがいる。

 またオリジナル・メンバーのアレンは、ソフト・マシーン脱退後はフランスに渡ってゴングを結成し、独自のヒッピー・サウンドを追求。エアーズも地中海のマジョルカ島を拠点にソロで多くの作品を発表。ワイアットは、事故で下半身不随になりながらも、優れた作品をリリースする。また、ジェンキンズは、1980年代以降は映画音楽やTVCM音楽などを多く手がけ、アディエマスというニュー・エイジ・ミュージック的プロジェクトでも商業的に大成功を収めた。

[松山晋也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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