タイワンリス(英語表記)Callosciurus caniceps thaiwanensis

改訂新版 世界大百科事典 「タイワンリス」の意味・わかりやすい解説

タイワンリス
Callosciurus caniceps thaiwanensis

齧歯(げつし)目リス科の哺乳類カーキ色の地に,黒と黄土色のあまり目だたない霜降り模様の入った体色のリス。尾の先に黒色の輪模様がある。ニホンリスに比べて手足が短く,やや体が大きい。体長21cm,尾長19cm,体重200g前後。ハイガシラリス台湾産の亜種で,日本には自然分布していなかったが,伊豆大島で,動物園で飼育していたものが逃亡,野生化し,1946年ころからツバキに目だった食害を与えるほどに増殖したのをはじめ大都市近郊の公園,丘陵地などに野生化した小個体群が見られる。原産地でも,森林ばかりでなく,二次林,耕地などの人為の影響の強い場所に多くすむ。おもな活動は樹上で行われるが,しばしば地上にも降りて食物をあさり,木の上に運んで食べる。果実,木の芽,葉などのほか,昆虫も食べる。巣は木の上に小枝や葉を編んでボール状につくられ,雌は年に数回,1~5子,ふつう2~3子を生む。寿命は飼育下で9年。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイワンリス」の意味・わかりやすい解説

タイワンリス
たいわんりす / 台湾栗鼠
gray-bellied free squirrel
[学] Callosciurus caniceps thaiwanensis

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目リス科の動物。ハイガシラリスの亜種で台湾、ミャンマービルマ)、タイ、マレー半島に分布する。体長18~24センチメートル、尾長17~21センチメートル。ニホンリス(ホンドリス)に比べ、四肢が短く、耳介が短く丸い。体色は背側が灰色または淡緑褐色で、ときに赤みを帯び、腹側は灰褐色をしている。森林、二次林、耕作地、公園などに生息し、低木の枝上に小枝と葉で巣をつくってすむ。おもに樹上で行動するが、木登りはニホンリスほど巧みではなく、しばしば地上に降りて採餌(さいじ)する。早朝と夕刻に活動し、果実、種子、芽、昆虫などを食べる。1産1~5子。日本では、伊豆大島で動物園から逃亡した飼育個体が野生化して増え、ツバキの実などを食害するので問題になっている。そのほか、神奈川県の江の島、東京都の駒沢(こまざわ)公園などいくつかの野生地が知られる。

[今泉吉晴]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイワンリス」の意味・わかりやすい解説

タイワンリス
Callosciurus canicepus; golden-backed squirrel

齧歯目リス科。体長 22cm,尾長 20cm内外。ニホンリス (→リス ) に似るが,腹面が白くなく,毛も綿毛がほとんどなくあらい。耳の先端には毛の総がない。おもに樹上で生活し,木の芽や実,樹皮などを食物とする。シッキム,ミャンマー,マレー半島,台湾に分布し,日本には 1933年に伊豆大島の動物園に輸入され,放し飼いにされた。その後大繁殖し,いまではツバキなどに害を与えている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタイワンリスの言及

【帰化生物】より

… 偶然に帰化したものとしては,飼育していたものが逃げ出して定着したものに,1918年ころから食用に北アメリカから移入し,各地で養殖していたが,その一部が逃げ出して各地に野生化したウシガエル,そのウシガエルの餌として30年ころ神奈川に移入して養殖していたところ,大雨による出水で逃げ出して,付近の水田などに野生化し,しだいに各地に分布を広げたといわれる北アメリカ産のアメリカザリガニ,35年ころ食用に台湾から移入したものが,小笠原,奄美,沖縄などに野生化した,アフリカ原産のアフリカマイマイなどがある。また,愛玩用に飼育していたものが逃げ出して帰化したものに,北海道,岐阜の金華山などに野生化した韓国産のチョウセンシマリス,東京付近などに野生化したセキセイインコその他多数の飼鳥,動物園で飼育していたものが逃げ出して野生化したものに,伊豆大島,鎌倉などにすみついた台湾原産のタイワンリス,毛皮獣では第2次大戦中南アメリカから輸入し,各地で盛んに養殖していたが,その一部が逃げ出し,岡山その他に野生化したヌートリア,同じころ養殖されていたと思われ,東京の江戸川付近に定着している北アメリカ産のマスクラット,戦後毛皮獣として輸入され,養殖されていたものが逃げ出し,北海道で野生化した北アメリカ産のミンクなどがある。さらに,輸入した植物などに付着して偶然に入って来たと思われるものに,明治末に観賞用植物についてオーストラリアから入ってきたイセリアカイガラムシ,第2次大戦中に日本に入った北アメリカ原産のアメリカシロヒトリ,同じころ中国から入ったアオマツムシなどがある。…

【リス(栗鼠)】より

…多くの種類があるが,日本には北海道にキタリスSciurus vulgarisの1亜種エゾリスS.v.orientalis(イラスト),本州,四国,九州にホンドリス(ニホンリス)S.lis(イラスト)の2種が生息する。また,伊豆大島などでは台湾原産のタイワンリスCallosciurus caniceps thaiwanensisが野生化している。
[昼行性・地上生リス]
 ジリス,ハタリス,プレーリードッグマーモットなどの仲間で,地下のトンネル中に巣をつくり,木には登らないものが多い。…

※「タイワンリス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android