日本大百科全書(ニッポニカ) 「タウビー」の意味・わかりやすい解説
タウビー
たうびー
Henry Taube
(1915―2005)
アメリカの化学者。カナダのサスカチェワン州ニュードルフに生まれる。サスカチェワン大学で学び、1937年修士号を取得、同年渡米して、1940年にカリフォルニア大学バークリー校で化学博士号を取得した。同校の専任講師を務めたのち、1941年コーネル大学助教授となり、翌1942年アメリカに帰化、さらに1946年シカゴ大学で助教授となり、のち教授に昇格、1956年から1959年まで化学部門の主任教授を務めた。1962年にスタンフォード大学の教授に転じ、1972年から1974年までと1978年から1979年の二度にわたり化学部門の主任教授を務め、1986年に退職して名誉教授となった。日本工学アカデミーの客員でもあった。
タウビーは、コーネル大学およびシカゴ大学時代に、ラジオ・アイソトープを使用して酸化還元反応や置換反応を定量的に分析する実験方法を開発した。その後、配位化合物の研究において、コバルトやクロームの金属錯体の電子移動(電子遷移)反応を調べ、金属錯体の中心にある金属イオンの周囲に配位している配位子が錯体間に配位子架橋とよばれる結合をおこすことにより、電子移動が引き起こされることを証明し、金属錯体の酸化還元反応のメカニズムを解明した。1983年に金属錯体の電子遷移反応の機構に関する研究の業績によって、ノーベル化学賞を受賞した。
[編集部 2018年9月19日]
『基礎錯体工学研究会編『新版 錯体化学――基礎と最新の展開』(2002・講談社)』