配位化合物(読み)ハイイカゴウブツ(英語表記)coordination compound

デジタル大辞泉 「配位化合物」の意味・読み・例文・類語

はいい‐かごうぶつ〔ハイヰクワガフブツ〕【配位化合物】

一つの原子あるいはイオンに、他のイオンあるいは分子配位結合によって結合している化合物錯化合物さくかごうぶつとほぼ同義。

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精選版 日本国語大辞典 「配位化合物」の意味・読み・例文・類語

はいい‐かごうぶつハイヰクヮガフブツ【配位化合物】

  1. 〘 名詞 〙 一つあるいは複数のイオンまたは分子が他のイオンまたは分子に付加した化合物。狭義には錯化合物をさす。この場合、配位結合により化合物が形成される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「配位化合物」の意味・わかりやすい解説

配位化合物
はいいかごうぶつ
coordination compound

錯化合物complex compoundと同義に用いられることもあるが、さらに広く、配位結合の含まれている化合物をこのようにいう。すなわち一つの原子にいくつかのイオンまたは分子が配位してできた化合物である。いわゆる錯化合物のほか付加化合物分子化合物などでこれに含められるものがある。たとえば、アンモニアNH3とフッ化ホウ素BF3とから、いわゆる付加化合物のH3N・BF3が得られ、ピリジンC5H5Nを過酸化水素で処理するとピリジン N-オキシドC5H5NOが得られるが、これらはいずれもNの非共有電子対がBまたはOのあいている軌道へ配位結合によって配位したH3N→BF3,C5H5N→O(→は配位結合を表す)のような配位化合物である。また普通にみられる錯化合物、たとえば[Co(NH3)6]Cl3,K4[Fe(CN)6],[Cr(H2O)6]Cl3などは、錯体([ ]で示されている)中の中心原子Co、Fe、Crなどのあいているd軌道に、NH3,CN-,H2OなどのN、C、Oの非共有電子対が配位している配位化合物である。水和物あるいは分子化合物の形で書けるKAl(SO4)2・12H2O,MgSO4・7H2Oなどもそれぞれ[Al(H2O)6]3+,[Mg(H2O)6]2+のような錯体からなる化合物であるからこれも配位化合物である。

[中原勝儼]

『山田祥一郎著『配位化合物の構造』(1980・化学同人)』『F・バソロ、R・C・ジョンソン著、山田祥一郎訳『配位化学――金属錯体の化学』第2版(1987・化学同人)』

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改訂新版 世界大百科事典 「配位化合物」の意味・わかりやすい解説

配位化合物 (はいいかごうぶつ)
coordination compound

狭義には錯化合物のことをいい,錯塩,錯分子,錯酸錯塩基が含まれる。広義には配位結合を含む化合物の意味に使われる。19世紀の後半には多数の金属塩のアンモニア和物や水和物などが知られていたが,その構造は当時の結合論,すなわちJ.J.ベルセリウスの電気化学的二元説では説明できなかった。たとえばCoCl3もNH3もそれぞれふつうの原子価を満足している(これらは一次化合物と呼ばれた)のに,なお結合して安定なアンモニア和物CoCl3・6NH3高次化合物と呼ばれた)を生ずる。スウェーデンのブロムストラントC.W.Blomstrand(1826-97)は有機化合物のCH2連鎖に類似した鎖状構造式を提出し,ヨルゲンセンS.M.Jørgensenはこれを改良したが,硝酸銀によってAgCl沈殿をつくるときに2種類の塩素イオンが存在することなどの実験結果を説明することはできなかった。A.ウェルナーは古典的な原子価論で説明することを断念し,1893年,金属原子を中心にして分子などがその原子特有の空間的に定まった位置に配列して第1圏(あるいは配位圏)をつくるという配位説の骨格となる理論を発表した。後になって,NH3などが結合できるのはNの孤立電子対が中心金属原子に供与されるためであることがわかり(シジウィックN.V.Sidgwick,1927),この結合は配位説を電子論的に説明するものであることから配位結合と呼ばれた。そのため錯化合物に限らず,配位結合をもつ化合物を広く配位化合物と呼ぶ場合もある。たとえば,[BF3・N(CH33]中では,N(CH33は,NH3と同様,Nの孤立電子対でBに配位しているので配位化合物である。
配位説
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「配位化合物」の意味・わかりやすい解説

配位化合物
はいいかごうぶつ
coordination compound

錯体,錯化合物とほぼ同義。配位化合物というときは中心原子と配位子との間の化学結合配位結合によるもののみをさすこともあるが,一般には化学結合の性格とは関係なく,配位子が中心原子を中心として立体的に対称性の高い位置を占めていれば配位化合物といってよい。高分子反応の触媒として,また生命現象においても重要な役割を演じている。たとえば植物の光合成に重要な葉緑素はマグネシウムの配位化合物であり,ポリエチレン合成のチーグラー触媒はアルミニウムとチタンの配位化合物である。

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化学辞典 第2版 「配位化合物」の解説

配位化合物
ハイイカゴウブツ
coordination compound

狭義の場合は,錯体と同義語として用いられる.広義の場合は,配位結合を有する化合物,たとえば,[F3B←NH3]などの付加物や,[I2← C6H6]のような分子化合物まで含まれる.

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百科事典マイペディア 「配位化合物」の意味・わかりやすい解説

配位化合物【はいいかごうぶつ】

配位結合を含む化合物の総称。ふつう,一つの原子またはイオンに他のいくつかのイオンまたは分子が付加してできた化合物をさし,錯化合物とほとんど同義に用いられることが多い。分子間の高次化合物,付加化合物などまで含めていうこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の配位化合物の言及

【錯体】より

…錯イオンは陽イオンまたは陰イオンの形で存在する錯体で,対イオンと結合して錯塩,錯酸,錯塩基をつくる。これらと錯分子とをひとまとめにしたものが狭義の錯化合物で,配位化合物ともいう。ふつうの錯体(ウェルナー錯体という)においては配位原子は孤立電子対で中心原子に配位結合で結合している。…

【配位説】より

…分子などが配位圏内では金属原子に対して同格に結びつくという意味でcoordinateという言葉が使われ,日本では配位と訳されるようになった。この配位説によって説明できる化合物のことを錯化合物あるいは配位化合物と呼ぶ。ウェルナーは金属イオンの酸化状態を示すふつうの原子価(主原子価)が飽和されているのに,なおH2O,NH3などの余分の分子などが中心イオンに結合できるのは,一定の方向性をもつ側原子価なるものがあるからだと考えたが,その本質については当時の結合論ではなお説明がつかなかった。…

※「配位化合物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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