日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
タウフィーク・アル・ハキーム
たうふぃーくあるはきーむ
Taufīq al-akīm
(1898/1902―1987)
エジプトの小説家、劇作家。アレキサンドリアに生まれる。法律を学ぶために渡仏するが、生来の演劇好きが高じて演劇および文学の分野で大いに収穫をあげ、帰国後上(かみ)エジプトの農村で検事職に就いた時期の体験が名作『田舎(いなか)検事の日記』(1937)を生む。それ以前から彼は執筆に専念し、エジプト現代小説を代表する佳作を数多く著しているが、彼の真骨頂はアラブ世界随一の劇作家と目される戯曲のほうにある。彼の名を不朽にした作品には『精神の回帰』(1927)、『洞穴の人々』(1933)、『オリエントからの小鳥』(1938)などがあり、戯曲、小説、評論の広い分野で健筆を振るった。
[奴田原睦明]
『堀内勝訳『精神の回帰』(1975・アジア経済研究所)』▽『堀内勝訳『現代アラブ小説全集2 オリエントからの小鳥』(1978・河出書房新社)』▽『野間宏責任編集、堀内勝ほか訳『現代アラブ文学選』(1974・創樹社)』