改訂新版 世界大百科事典 の解説
タウフィーク・アルハキーム
Tawfīq al-Ḥakīm
生没年:1902-
エジプト三大作家の一人。アレクサンドリアでトルコ系の母とエジプト人の父の間に生まれる。初めカイロで法律を学び,フランスに留学するが,しだいに関心が芸術,特に文学に移る。帰国後数年,公務員生活を送るが,1930年ころから著作活動に全力を傾注し,初めは戯曲家として名をなす。エジプト国会図書館長,芸術科学院メンバーの要職を経て1976年アジア・アフリカ作家会議のロータス賞を受けた。《洞窟の人々》《魂の回帰》(ともに1933),《田舎検事の日記》(1937),《オリエントからの小鳥》(1938。邦訳あり)などの著作が有名である。《木に登る者》(1963)などの戯曲も最近英訳され,高い評価を受けている。ナーセルの死後,《良識の回復》(1974)を発表し,ナーセル時代の暗黒面を描出してナーセルおよび社会主義批判を展開して注目された。
執筆者:奴田原 睦明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報