改訂新版 世界大百科事典 「タッソーニ」の意味・わかりやすい解説
タッソーニ
Alessandro Tassoni
生没年:1565-1635
イタリアの詩人,批評家。モデナの貴族の生れ。ボローニャ,ピサ,フェラーラに遊学したのち,1599年ローマで枢機卿に仕えるが,1604年に職を辞し,本格的な文筆活動に入る。20年サボイア公の書記に任ぜられてトリノに赴くが,ほどなく仲たがいしてローマに帰る。晩年はモデナ公に迎えられて故郷に生涯を終えた。同時代人にはG.ガリレイ,G.ブルーノ,バロックの詩人マリーノらがおり,ルネサンス後の新しい文化を模索する時代潮流のなかで,彼の批評精神は権威の模倣に対する痛烈な批判となって現れた。《雑考十巻》(1608)では古代の権威,とりわけアリストテレスへの反抗が主調低音をなし,《ペトラルカの抒情詩に関する考察》(1609)では当時の西欧で大流行したペトラルカ風恋愛詩が攻撃の的となる。一方,詩人としての本領は風刺において遺憾なく発揮され,いわゆる英雄喜劇詩を創始したとされる代表作《奪われた桶》全12歌(1622)は,トロイア戦争を彷彿(ほうふつ)とさせるボローニャとモデナの戦争を,アリオストからタッソへと受け継がれた英雄叙事詩の形式で歌って,一種のパロディとなっている。
執筆者:林 和宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報