日本大百科全書(ニッポニカ) 「タナグモ」の意味・わかりやすい解説
タナグモ
たなぐも / 棚蜘蛛
店蜘蛛
節足動物門クモ形綱真正クモ目タナグモ科の総称。代表的なのは、家屋内の隅などの薄暗い所に棚状の網を張るイエタナグモTegenaria domesticaで、棚網の奥にトンネル状の住居がある。世界の温帯地方に広く分布する種で体長8~10ミリメートル、褐色で腹部は灰色でかすかな網状斑(はん)がある。
野外で普通にみられる種はクサグモAgelena limbataで、低木や生け垣などに網を張りノジタナグモともよばれる。美観を損なうので嫌われがちであるが、生け垣などにくる害虫を補食してくれる益虫である。コタナグモCicurina japonicaは、黄白色の微小なクモで落葉層や洞窟(どうくつ)内にすむ。タナグモの仲間で、とくに種類や個体数の多いのはヤチグモ類である。石の下や山道の切り通しなどにトンネル状住居をつくる。網はタナグモやクサグモのように大きくはなく、入口付近にわずか張るだけである。各地に広く分布するものから、地理的隔離によって局地的な分布をするものもある。
[八木沼健夫]