タナグモ

改訂新版 世界大百科事典 「タナグモ」の意味・わかりやすい解説

タナグモ

タナグモ科Agelenidaeに属するクモのうち,クサグモ類,ヤチグモ類を除いたものの総称英名は分類学上別系統のジョウゴグモなどとともに,住居と網の形からfunnel-web spiderと呼ばれる。和名は棚状の網を張ることに由来する。体長5~10mm。樹木,石などと地面の接する部分,木の幹のくぼみや割れ目,また建物の壁の隅などに棚網を張り,その奥に管状の住居をつくり,中に潜む。棚網に獲物が落ちると住居からとび出し,かみつき,とらえて住居に引きずりこむ。その動作は敏しょうである。7~8月の生殖期に入ると雄は住居を捨て,雌を探して徘徊するようになる。雌の網を歩脚でたたき,雌に来訪を知らせ,雌からの反応を待って精液の受渡しを行う。世界に広く分布し,日本には,イエタナグモTegenaria domestica,コタナグモCicurina japonica,モリタナグモCryphoeca silvicolaなど8種類がいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タナグモ」の意味・わかりやすい解説

タナグモ
たなぐも / 棚蜘蛛
店蜘蛛

節足動物門クモ形綱真正クモ目タナグモ科の総称。代表的なのは、家屋内の隅などの薄暗い所に棚状の網を張るイエタナグモTegenaria domesticaで、棚網の奥にトンネル状の住居がある。世界の温帯地方に広く分布する種で体長8~10ミリメートル、褐色腹部灰色でかすかな網状斑(はん)がある。

 野外で普通にみられる種はクサグモAgelena limbataで、低木生け垣などに網を張りノジタナグモともよばれる。美観を損なうので嫌われがちであるが、生け垣などにくる害虫を補食してくれる益虫である。コタナグモCicurina japonicaは、黄白色の微小なクモで落葉層や洞窟(どうくつ)内にすむ。タナグモの仲間で、とくに種類や個体数の多いのはヤチグモ類である。石の下や山道の切り通しなどにトンネル状住居をつくる。網はタナグモやクサグモのように大きくはなく、入口付近にわずか張るだけである。各地に広く分布するものから、地理的隔離によって局地的な分布をするものもある。

[八木沼健夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タナグモ」の意味・わかりやすい解説

タナグモ
Agelenidae; funnel weaver

クモ綱クモ目タナグモ科に属する種類の総称。体長1~1.5cm。森林内のほか屋内,床下,低木,生垣などに水平な棚網を張り,その奥にトンネル状の住居をつくる。雌雄の形態的差異はほとんどない。日本産は 10属 70種。代表種は屋内の隅などに棚網を張るイエタナグモ Tegenaria domesticaで,体長約 1cm,頭胸部黄褐色,腹部の灰色地に黒色のまだら模様をもち,世界的に分布している。このほか野外ではクサグモ,ヤチグモ Coelotes exitialisおよびその近縁種などが知られている。 (→クモ類 )

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世界大百科事典(旧版)内のタナグモの言及

【クモ(蜘蛛)】より

…しかし網を張らないナガイボグモ科,ササグモ科もこれに含まれる。日本にはヒメグモ科,ホラヒメグモ科,サラグモ科,センショウグモ科,ヨリメグモ科,コガネグモ科,カラカラグモ科,アシナガグモ科,ナガイボグモ科,ヒラタグモ科,ホウシグモ科,ウシオグモ科,ミズグモ科,タナグモ科,ハタケグモ科,キシダグモ科,コモリグモ科,ササグモ科など21科がいる。二爪類Dionychaは2個のつめをもつクモで,毛束のあるものが多い。…

※「タナグモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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