改訂新版 世界大百科事典 「クサグモ」の意味・わかりやすい解説
クサグモ (草蜘蛛)
grass spider
Agelena limbata
タナグモ科のクモ。庭木や垣根などに棚をつるしたような網を張り,網の奥に管状の住居をつくる。平地から山間部にかけてふつうに見ることができる。沖縄を除く日本全土,朝鮮半島,中国に分布。体長15~17mm。頭胸部,腹部ともに灰色の地に2本の太い黒色縦斑を有し,腹部の縦斑は数本の灰色横線によって切られている。8月中~下旬にかけて成体となり,9月中~下旬にかけて住居の奥や木の葉を集めてつくった産室の中で産卵する。卵は10日ほどで孵化(ふか)するが,子グモは卵囊から外に出ることはなく,2齢幼体のまま卵囊内で越冬し,翌年の3月下旬~4月上旬にかけて卵囊より出て分散する。クサグモ属の仲間は日本ではこのほかに,ほぼ同大のコクサグモA.opulentaとイナズマクサグモA.labyrinthicaが分布している。コクサグモは日本全土にふつうに生息しているが,イナズマクサグモは標高900m以上の地域に多く,平地ではほとんど見られない。
執筆者:新海 栄一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報