日本大百科全書(ニッポニカ) 「タラゴン」の意味・わかりやすい解説
タラゴン
たらごん
tarragon
[学] Artemisia dracunculus L.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。南ヨーロッパからシベリア原産の香辛料植物。高さ0.6~1メートル。同じくキク科のヨモギと同属で、全体がヨモギに似るが、葉は線状披針(ひしん)形である。夏に緑白色の小花をつけるが、種子はまれにしかできず、繁殖は地下茎による。冬には地上部が枯れるが、温室で育てれば冬季でもよく茂り、葉がとれる。日本へは1915年(大正4)に渡来したが、夏の暑さに弱く栽培しにくく、見本的に植えられているにすぎない。
[星川清親 2022年3月23日]
食品
タラゴンの栽培品種に2種あり、一つはフランス種タラゴンで、フランスではエストラゴンestragonとよばれ「本物のタラゴン」とされる。他の一つはロシア種タラゴンで、香りが弱い。葉を日陰干しにしたものが香辛料として食通に好まれる。甘草(かんぞう)、アニスに似た淡い芳香とほろ苦味が特徴で、鶏肉、シチメンチョウ、野鳥料理によくあい、トマトジュース、ツナサラダ、シチュー、フィッシュソースにも用いられる。フランスのカタツムリ料理のガーニッシュとしては欠かせない。また、ベアネーズ、タルタル、オーランデーズなどのソース類の風味づけによい。ワイン酢にタラゴンを浸漬(しんし)してつくったタラゴン酢は、サラダのドレッシング用として知られている。
[齋藤 浩 2022年3月23日]