日本大百科全書(ニッポニカ) 「エスカルゴ」の意味・わかりやすい解説
エスカルゴ
えすかるご
escargot フランス語
[学] Helix pomatia
軟体動物門腹足綱マイマイ科のカタツムリ。食用種である。フランス語でエスカルゴは元来カタツムリまたは螺旋(らせん)を意味する。英語ではapple snailあるいはRoman snailといわれ、また、学名のラテン語種小名pomatiaはリンゴの意味ではなく、ギリシア語の「壺(つぼ)の蓋(ふた)」に由来するといわれる。中部ヨーロッパに普通にみられるカタツムリで、海抜1600メートルまで分布し、イギリスにも移入されている。なかでもフランスのブルゴーニュ地方に産するものが最良とされ、また、ブドウの葉で育ったものがもっとも味がよいとされて、とくにEscargot des vignes(ブドウのエスカルゴ)とよばれる。殻は球形で厚く、茶褐色でむらのある地肌に1~4本の白色帯が走る。成長線も強く、臍孔(へそあな)はふさがり、殻口外唇はやや肥厚している。殻高、殻径とも40ミリメートル内外である。食用カタツムリとして「エスカルゴ」と総称されるものは10種以上あり、フランスでは養殖されている。前種の次に重要なのはプチグリH. aspersaである。殻高、殻径とも30ミリメートルぐらいで、黄褐色の地に紫褐色の帯が4条走っていて、殻全面に縮緬(ちりめん)状のしわがある。この種はヨーロッパばかりでなく、アフリカ南部、アメリカ、オーストラリアまで移入されて繁殖し、common garden snailとよばれている。
[奥谷喬司]
食用
食用には、多くは飼育されたものが利用される。カタツムリ食用の歴史は、ヨーロッパでは古く、紀元前50年、すでに食用の目的でカタツムリが飼育されていたという。中世のカトリックでは、断食期間中でも、カタツムリの食用が許されていたため、僧院でもかなり広くカタツムリが飼育されていた。フランスで、カタツムリ専門の料理店ができたのは18世紀末ごろである。重要な料理材料の一つとされ、現在でもフランス料理においては、高い位置を占めている。
カタツムリを用いた料理でもっとも有名なのは、エスカルゴブルゴーニュ風(エスカルゴ・ア・ラ・ブルギニョンヌ)である。なまのものをゆでて、殻から出し、きれいに洗う。これをさらに白ワインやブイヨンで煮る。カタツムリの殻に、パセリやニンニク、エシャロットのみじん切りをあわせたバターとともに詰め、オーブンで焼き、熱いうちに供する。また、シチューや炒(いた)め物にもする。日本へは、主として殻を別添した水煮缶詰が輸入されている。なお、食用にするカタツムリは、普通キャベツやレタス、ブドウの葉などを餌料(じりょう)にして飼育する。
[河野友美・大滝 緑]