日本大百科全書(ニッポニカ) 「タルタロス」の意味・わかりやすい解説
タルタロス
たるたろす
Tartaros
ギリシア神話の天地生成で、カオス(混沌(こんとん))から生じた地下のもっとも奥底にあたる部分の擬人化。また冥界(めいかい)においては極悪の重罪人が落とされるという底なしの奈落(ならく)。そのいちばん下の部分と冥界の支配者ハデスとの距離は、大地と天の間のそれと等しいという。キクロペスやティタンのような神々の権力争いの敗者とか、タンタロス、シシフォス、イクシオンのような神々への反逆者、あるいは冒涜者(ぼうとくしゃ)が落とされる牢獄(ろうごく)であった。ゼウスに背けばオリンポスの神々さえもここに投げ込まれるので、タルタロスは恐れられていた。しかし、時代が下ると冥界そのものと同一視されるようになった。
[伊藤照夫]