内燃機関における排気タービン駆動のタービン式過給機のこと。内燃機関では通常、ピストンの下降行程に生じるシリンダー内の負圧によって、混合気または空気を吸入する。これをナチュラル・アスピレーションnatural aspirationまたはノーマル・アスピレーションnormal aspiration(自然吸気)という。しかしバルブの開いている短い時間内に十分な吸気を行うことは困難なので、ポンプで積極的に押し込んでやると、シリンダーの容積効果があがり、実効圧縮比、爆発圧力ともに高まって、出力が向上する。これがスーパーチャージングsupercharging(過給)である。もともと航空機が高空に上昇すると空気密度が下がり、出力の低下をきたすのを補う目的で、第一次世界大戦中に実用化された。第一次大戦後はレーシングカーや高性能スポーツカーに応用され、とくにレースの世界では第二次大戦まではスーパーチャージャーの時代といわれるほど普及した。
しかしスーパーチャージャーはもともとエンジンの回転力で駆動するため、それによる出力損失も小さくない。そこで第二次大戦末の軍用機に排気圧力で過給用タービンを回す方式が実用化された。これがターボチャージャーである。戦後は主としてアメリカで小型プロペラ機やレーシングカーに用いられてきたが、1970年代末ごろからヨーロッパでもレーシングカーに使われるようになり、80年代に入って実用車にも急速に普及した。もともと排気として大気中に捨てていた熱と圧力のエネルギーの回収利用なので、省エネルギー時代の出力向上策として大流行したが、84年をピークに装着率は下降の傾向をたどり、鎮静化に向かっている。今後は一部のとくに高速性能をねらった車に装着されていくことになろう。ターボチャージャーの装着により出力は30~50%も向上するが、街なかで常用するような低回転域ではほとんど効果がなく、またいったんアクセルを緩めるとタービンの回転が急速に落ちて、次にアクセルを踏んでから回転があがって過給効果が発揮されるまでに時間的な遅れが生じる。このターボラグturbo lagとよばれる現象によって、アクセルへの応答性のよいDOHC(ツインカム)エンジンに人気が移ったといえる。しかしターボチャージャー自体も改良されており、なくなることはないものと思われる。
ターボチャージャーで過給された空気は高温のため密度が下がるので、とくに高性能な車では、ターボチャージャーを出た空気を、インタークーラーintercoolerという一種の放熱機で冷却してからエンジンに供給している。インタークーラー付きターボチャージャーはレーシングカーやスポーツカーばかりでなく、大型トラックのディーゼルエンジンにもみられる。最近ではターボチャージャーを二基備えた車や、ターボチャージャーとスーパーチャージャーを併用するものも現れている。
[高島鎮雄]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…この目的で,外気を圧縮し,空気の密度を増してシリンダー(ロータリーエンジンでは燃焼空間)内に導くことを過給といい,過給を行うために用いられる送風機あるいは圧縮機を過給機またはスーパーチャージャーと呼ぶ。過給機には,エンジンのクランク軸から歯車を介して機械的に駆動されるものと,排気タービンによって駆動されるものがあり,後者はターボチャージャーとよばれる。機械式は過給機の運転にエンジンの動力の一部が消費されるため,ターボチャージャーに比べるとその効率は劣る。…
…ふつう,遠心式圧縮機を駆動して過給空気を作るのに利用される。この場合,一般には排気タービンと圧縮機とがユニットとしてまとめられており,この装置をとくに排気ターボ過給機exhaust turbocharger,あるいはターボチャージャーと呼ぶ。排気ターボ過給の適用によって,ディーゼルエンジンでは100%以上の出力増大と10%以上の燃料消費低減が達成されているが,ガソリンエンジンなどの火花点火機関では,ノッキングのため高度の過給はレース用機関に限られる。…
※「ターボチャージャー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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