内燃機関では吸入する空気の質量(重量)を増せば燃焼する燃料も増加でき,出力を増すことができる。この目的で,外気を圧縮し,空気の密度を増してシリンダー(ロータリーエンジンでは燃焼空間)内に導くことを過給といい,過給を行うために用いられる送風機あるいは圧縮機を過給機またはスーパーチャージャーと呼ぶ。過給機には,エンジンのクランク軸から歯車を介して機械的に駆動されるものと,排気タービンによって駆動されるものがあり,後者はターボチャージャーと呼ばれる。機械式は過給機の運転にエンジンの動力の一部が消費されるため,ターボチャージャーに比べるとその効率は劣る。このほか,特殊なものとして排気系の圧力波を利用したものもある。
1920年代から競走用自動車などに機械式過給の適用例はあるが,実用期に入ったのは第2次世界大戦中で,軍用機における機械式過給が普及,さらにアメリカでは同大戦中にターボチャージャーの実用化にも成功し,高々度飛行が可能になった。その後ターボチャージャーによる効率的な過給がディーゼルエンジンにおいて普及し,とくに船舶用エンジンでは,無過給時代に比べるとその出力は3ないし4倍にも向上している。これに対して自動車用エンジンは,一般に運転条件(負荷,回転速度)が大きく変動するため効果的なターボ過給は実現しにくく,出力向上も30%程度であるが,アメリカではすでに大型自動車の大半はターボ過給エンジンを搭載している。
執筆者:酒井 宏
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空気または混合気を圧縮して往復動内燃機関に送る送風機。スーパーチャージャーsuperchargerともいう。往復動内燃機関では吸入する空気量が多いほど出力は大きくなるので、同じ大きさの機関からより多くの出力を得る目的で、第一次世界大戦での飛行機用機関で実用化され、以後飛行機用の大型往復動内燃機関、高性能自動車用の機関、船舶用の往復動内燃機関で使用されている。過給機には回転羽根車のような速度型と噛合(かみあ)い歯車のような容積型があり、駆動方法としては直接機関で駆動するものと、排気タービンで駆動するものがあり、後者では速度型の過給機が用いられる。また排気タービンを用いるものでは排気のエネルギーを回収でき、熱効率の向上が期待できる。船舶用などの大型ディーゼル機関ではすべて排気タービン駆動の過給機が用いられ、自動車用などの小型のガソリンエンジンやディーゼルエンジンでも、一部で機関駆動のものと排気タービン駆動のものが用いられている。排気タービン駆動の過給機は、ターボチャージャーturbochargerともいう。
[吉田正武]
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