ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダイソン」の意味・わかりやすい解説
ダイソン
Dyson, Freeman
[没]2020.2.28. アメリカ合衆国,ニュージャージー,プリンストン近郊
フリーマン・ダイソン。イギリス生まれのアメリカ合衆国の物理学者,教育者。フルネーム Freeman John Dyson。地球外文明や地球外生命に関する思索的研究で知られる。音楽家を両親にもち,10代の頃から数学に情熱を注ぎ,ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで学ぶ。1943年空軍入隊のため学業を中断し,第2次世界大戦後の 1945年に学士号を取得,トリニティ・カレッジの研究員となる。1947年物理学研究のためアメリカに渡り,コーネル大学とプリンストン高等研究所で 2年間過ごす間に著名な物理学者 J.ロバート・オッペンハイマーに師事する。1949年イギリスのバーミンガム大学の研究員となり,アメリカに戻って 1951年コーネル大学物理学教授,2年後にプリンストン高等研究所物理学教授に就任,2000年名誉教授となる。1957年アメリカに帰化。朝永振一郎,リチャード・ファインマンらとともに量子電磁力学 QEDの体系化に寄与する一方で,太陽系内外の探査と植民地化を長年提唱し,知的地球外生命の証拠を探す研究を続け,1950年代には人間を火星に運ぶ核推進宇宙船を開発するオリオン計画の研究チームに参加した。著書に『武器と希望』Weapons and Hope(1984),『生命の起源』Origins of Life(1985),『多様化世界』Infinite in All Directions(1988),『科学の未来を語る』Imagined Worlds(1998),『ダイソン博士の太陽・ゲノム・インターネット:未来社会と科学技術大予測』The Sun, the Genome, and the Internet(1999)など多数。自伝に『宇宙をかき乱すべきか ダイソン自伝』Disturbing the Universe(1979),書簡形式の "Maker of Patterns"(2018)がある。1981年ウルフ賞,1996年ルイス・トーマス賞,2000年宗教における進歩のためのテンプルトン賞を受賞。テンプルトン賞の受賞スピーチで「人間の遺伝子の自由市場」に言及し,それが人類を遺伝に基づく社会階級に分類し,奴隷社会へと導く危険性があると警鐘を鳴らした。イギリスのロイヤル・ソサエティ(王立協会)フェロー,全米科学アカデミー会員。
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