日本大百科全書(ニッポニカ) 「だいち2号」の意味・わかりやすい解説
だいち2号
だいちにごう
宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が2014年(平成26)5月にH-ⅡAロケットにより打ち上げた陸域観測技術衛星2号。ALOS-2(エイロスツー)(Advanced Land Observing Satellite-2)ともよばれる。「だいち」(2006年打上げ)に搭載された合成開口レーダーPALSAR(パルサー)(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダー)の発展改良型(PALSAR-2)を搭載し、送られてくるデータは、災害時の被災地の状況把握、国土情報の継続的な蓄積・更新、農作地の面積把握の効率化、CO2吸収源となる森林の観測を通じた地球温暖化対策などに活用される。衛星は高度約630キロメートルの太陽同期準回帰軌道を軌道傾斜角98度で、約98分で地球を周回する。衛星の大きさは軌道上で10.0メートル×16.5メートル×3.7メートルで、打上げ時の質量は約2000キログラムである。PALSAR-2は次の三つのモードで観測する。
(1)スポットライトモード:分解能1メートル(進行方向)×3メートル、観測範囲は25キロメートル四方で、もっとも解像度の高いモード。
(2)高分解能モード:分解能3メートル(観測幅50キロメートル)、分解能6メートル(観測幅50キロメートル)、分解能10メートル(観測幅70キロメートル)の選択ができる。
(3)広域観測モード:分解能が100メートルで観測幅が350キロメートル、または分解能が60メートルで観測幅が490キロメートルの広域を観測するモード。
「だいち2号」は、基本観測シナリオを設定して、世界規模での計画観測を実施している。運用開始から2年経過した時点で、3メートル分解能で世界の約55%、6メートル分解能で約50%、10メートル分解能では全球のほぼ99%を撮像している。
「だいち2号」は日本周辺を12時間以内に観測することができることから、災害時の緊急観測対応が可能であり、2015年8月には桜島噴火の緊急観測を実施している。また、二つの時期の画像の干渉処理により地形変化を解析できるため、2014年10月と2015年5月との比較では箱根(はこね)大涌谷(おおわくだに)の火山噴火で6センチメートル程度の隆起を観測した。「だいち2号」は比較的波長の長いLバンド(波長約24センチメートル)を使用するため、地表の植生の影響を受けずに地形変化を解析できる。また、船舶自動識別装置(AIS:Automatic Identification System)を搭載しており、SARの船舶撮像画像とあわせて、外洋における船舶識別に活用される。
[森山 隆 2017年3月21日]