神奈川県南西部、足柄下(あしがらしも)郡箱根町(はこねまち)にある硫気孔群のある谷で、早川の水源の一つ。「おおわきだに」ともいい、古くは大地獄といっていた。1872年(明治5)明治天皇が小地獄へ入湯のおりに、そこを小涌谷と改めたのにならい、ここも大涌谷とした。箱根火山の最高峰、中央火口丘神山(かみやま)(1438メートル)の北斜面の中腹にあたり、箱根火山活動の末期におきた神山の爆裂(大涌谷爆裂)によってできた谷で、噴気孔群は火山活動の名残(なごり)を示すもの。大涌谷の二つの谷のうち、南西の閻魔台(えんまだい)はいまも活動を続けて硫気を含んだ水蒸気を盛んに噴出し、熱泥や硫気孔の周りに硫黄(いおう)の針状結晶がみられる。しかし、北東の地獄沢は活動が衰え、熱気を噴き出すにとどまっている。
大涌谷は大昔から小涌谷(小地獄)とともに箱根の霊境の一つで、箱根権現(ごんげん)(箱根神社)の境内とされていた。高温、酸性の温泉が湧(わ)き出し、卵を入れると殻の黒いゆで卵となり、箱根名物の一つ。また活動の衰えている地獄沢の熱気の噴出点には石室(いしむろ)が設けられ、水を注いで自然加熱されて含緑礬(りょくばん)硫化水素泉とされ、仙石原温泉(せんごくはらおんせん)、強羅温泉(ごうらおんせん)へ送られている。1972年(昭和47)箱根ロープウェイ大涌谷駅前に町立の大涌谷自然科学館が設立され、箱根火山の成長・地質・生物・温泉、名所旧跡などの資料が展示されていた(2003年閉館)。
[浅香幸雄]
〈おおわきだに〉ともいう。神奈川県南西部,箱根火山の中央火口丘,神山の北西麓にある硫気噴孔のある谷。標高800~1150m。約3000年前水蒸気爆発によって形成された馬蹄形の爆裂火口で,激しい噴気活動を見ることができる。昔は大地獄と呼ばれていたが,1872年(明治5)明治天皇の行幸に際し,大涌谷と改称された。その時,神山と駒ヶ岳の接する部分に小地獄と称する噴気地帯があったが,それも小涌谷と改称された。大涌谷の火山性水蒸気と仙石原からポンプで送る地表水とを混合し,日量5600m3の造成温泉を温泉の湧出しない強羅(ごうら),仙石原の温泉に供給している。大涌谷に湧出する温泉は酸性硫酸塩泉である。大涌谷の南西方に大量に自然湧出する姥子(うばこ)温泉がある。大涌谷からの富士山,箱根カルデラの眺望がよく,付近に箱根町立大涌谷自然科学館(2003年閉館)がある。
執筆者:大木 靖衛
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