ダノン・グループ(読み)だのんぐるーぷ(英語表記)Groupe Danone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダノン・グループ」の意味・わかりやすい解説

ダノン・グループ
だのんぐるーぷ
Groupe Danone

フランスの乳製品飲料、菓子製品の世界的企業。主要ブランドに乳製品のダノンミネラルウォーターエビアンEvian、ボルヴィックVolvic、菓子のLU(ルー)などを有する。

[簗場保行]

ダノンの成立

ダノン・グループの前身は、食品会社のジェルベ・ダノンGervais-Danoneと、ガラス製品および飲料のメーカーであったBSNグループが1973年に合併して誕生したBSNジェルベ・ダノンである。

 ジョルベ・ダノンの起源は1919年、スペインのバルセロナにおいて医師のアイザック・カラソーIsaac Carasso(1874―1939)が世界で初めてヨーグルトの工業化に成功し、息子ダニエルDanielの名をもじった「Danone」を商標に薬局でヨーグルトを販売したのが始まりである。1929年ダニエルがダノン社創設。1932年パリに工場を建設、当時としては革新的な容器洗浄と低温殺菌、牛乳を沸騰させる回転羽などの設備を備えていた。その後1960年代にチーズ製造のジェルベ社と合併してジェルベ・ダノンに改称した。

 一方、BSNグループはガラス容器を主製品とするブースワ・ガラスLes Glases de Boussois、板ガラスを主力とするスーション・ヌーブセル・ガラスLa Verrerie Souchon Neuveselの2社が、ヨーロッパ市場での競争力強化のため1966年に合併して成立した。BSNグループは1969年にミネラル・ウォーターで有名なエビアン、1970年にビールのクローネンブルグKronenbourgを買収して食品業界に進出した。ミネラル・ウォーターとビールはともにガラス容器を使用する食品であり、在来事業との補完関係を生かした合併であった。これはBSNにとっても大きな転換点となった歴史的合併であった。

 そして1973年、ジェルベ・ダノンとBSNグループは合併した。

[簗場保行]

食品事業の推進

BSNジェルベ・ダノンは、1980年代からはヨーロッパ市場の発展、とくに流通企業の強化の動きに対抗して香辛料、糖菓子部門の会社を多数買収した。1986年ヨーロッパのジェネラル・ビスケット社、1989年にはアメリカのナビスコNabisco Holdings Corp.のヨーロッパ子会社を買収、1990年代からは世界市場をにらんだ海外戦略を推進した。

 ベルリンの壁崩壊後いち早く東欧に進出し、乳製品、ビスケット、ミネラルウォーターの市場開拓を進め、フランス国内ではボルヴィックを買収した。さらにラテンアメリカ、アジア、南アフリカへの進出を本格化。1990年代なかばには事業部門を乳製品、ビスケット・シリアル、飲料に集中し、同時に国際化をさらに推進。食品部門の成長に伴い、1994年社名から「BSN」をとりブランド名と一致する現社名に変更した。1998年、インドネシア、中国などアジアでミネラルウォーターの会社を相次いで買収、北アメリカでもアクアペンAquaPenn Spring Water Co., Inc.を買収した。

 こうした拡大戦略と並行して、既存部門の集約・整理も進められた。食品事業への傾注に伴い、第一次石油ショック後の長期不況を経た1981年には、食品部門と無関連のブースワ板ガラス事業を売却している。1998年ドイツの大手ガラスメーカー、ゲレシャマイヤーGerresheimer AG.と提携し、かつての中核事業であったガラス容器部門を統合したが、これも主要食品部門への事業集約化に並行した分離策である。さらに2001年には低収益の菓子事業のリストラ策を発表した。このような事業再編の背景には、ヨーロッパ市場の拡大とグローバリゼーション進捗(しんちょく)とともに、ネスレをはじめとする食品大手との間の競争激化があった。

 2007年にオランダのベビーフード大手ヌミコNumicoを買収する一方、ビスケット・シリアル部門をクラフト・フーズKraft Foods Inc.に売却した。

 2010年の売上高は170億1000万ユーロ、純利益18億7000万ユーロ、従業員数は約10万人であった。

[簗場保行]

日本との関係

日本へは1980年(昭和55)、味の素(もと)との合弁で「味の素ダノン」を設立して進出した。1987年、伊藤忠商事、カルピス食品工業(現、カルピス)と提携してエビアンの本格販売を開始。1992年(平成4)にはカルピス食品工業を味の素ダノンに加え「カルピス味の素ダノン」に改組した。その後2000年にカルピスと包括提携を結び、カルピスは自社製品を海外で拡販するとともに、ダノンのエビアン事業を日本国内で強化することとなった。また三菱商事が輸入販売していたボルヴィックは、2002年にダノン、キリンビバレッジ、三菱商事の3社共同出資による会社、キリンMCダノンウォーターズを設立して事業展開を開始した。

 ミネラルウォーター事業は、世界的に環境汚染が進行するなかで成長分野であり、両社は世界中の土地を買って源泉を押さえ、現地で独自銘柄の商品をつくって成功した。

 ダノン・グループは2007年、カルピス味の素ダノンの全株式を買い取り、社名をダノンジャパンとした。

[簗場保行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android