日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーグルト」の意味・わかりやすい解説
ヨーグルト
よーぐると
yoghurt
アナトリア(トルコ)およびバルカン半島周辺の東欧諸国で、古くから利用されてきた発酵乳の一種。ロシアの生物学者メチニコフが、ブルガリアに長寿者が多いこととヨーグルト飲用の習慣を結び付け、乳酸菌が腸内の有害細菌の発育を抑制するためという説を唱えてから、改めて欧米諸国に普及し、現在では発酵乳といえばヨーグルトをさす場合が多い。元来、牛乳、羊乳またはその脱脂乳を殺菌せずに室温に放置するか、または前日つくったヨーグルトの一部を種として加えて、自然に乳酸発酵させたものであって、そのまま、あるいは砂糖や蜂蜜(はちみつ)などを加えて食べるほか、肉料理の調味、野菜のドレッシングなど広く調理材料として用いられてきた。現在ではヨーグルトそのもののほか、糖類、香料、果汁、果実加工品などを加えたフレーバーヨーグルト、カードを細かく砕いて液状にしたドリンクヨーグルト、アイスクリーム状に凍結させたフローズンヨーグルトなど、多種類の加工品が流通している。
近代的製法は、牛乳、脱脂乳または乳製品を原料とする還元乳を加熱殺菌し、乳酸菌発育温度(約40℃)まで冷却したあと、純粋培養をした乳酸菌を接種混合する。発酵は30~40℃の範囲で5~10時間で終了し、その後発酵の進行を止めるために10℃以下に冷却する。使用される乳酸菌は乳酸生成力、発酵フレーバーの付与などの目的で選択されるが、一般的にはブルガリア桿菌(かんきん)、アシドフィラス桿菌、ラクチス球菌、サーモフィラス球菌などを数種混合して用いられる。家庭でつくるには、市販牛乳またはスキムミルクを溶解したもの1リットルを40~45℃に加温し、市販のヨーグルト菌種または市販のプレーンヨーグルトを大さじ2杯程度加えて混合し、保温ジャーに入れて5~8時間放置すれば手軽にできる。
ヨーグルトは乳成分に加えさわやかな酸味が特徴で、とくに脱脂乳でつくったものは低カロリー食として普及している。そのまま野菜、果物のドレッシングとして用いたり、ヨーグルトケーキ、ババロアなどの製菓材料として利用されるほか、調理材料として肉類のつけ込み、シチューやカレーなどの煮込み料理に加えるなど、広く利用されつつある。
[新沼杏二・和仁皓明]