チャガ族(読み)チャガぞく(その他表記)Chagga
Chaga

改訂新版 世界大百科事典 「チャガ族」の意味・わかりやすい解説

チャガ族 (チャガぞく)
Chagga
Chaga

東アフリカ,タンザニア連合共和国の北東部に住むバントゥー系の農耕民。人口44万(1967)。キリマンジャロ山の南麓の山腹斜面を開墾し,換金作物のコーヒー栽培に従事することで知られている。ほかに,主食用としてトウモロコシバナナを栽培し,牛やヤギも飼育している。チャガ族がコーヒー栽培を始めたのは1900年代最初頭のことで,22年ころから小農方式で盛んに行った。コーヒーのプランテーションを経営するヨーロッパ人からの干渉にもめげず,25年からは販売機構の組織化を図り,キリマンジャロ原住民コーヒー栽培者連合会KNCU)を結成し,良質のコーヒーの販路を開いた。36年には1500tの生産量に達したが,集約的なコーヒー栽培は,独自に開発した灌漑システムにより可能であった。チャガ族は近代的な測量技術も機械もなしで,キリマンジャロ山の高所から峡谷をぬって,長い水路を引くことに成功した。39年にはKNCUは2万6000名の組合員を獲得するにいたったが,これは東アフリカにおける協同組合運動のモデルとして,それ以後,重要な役割をつとめた。こうして,チャガ族はタンザニア国内でも,富裕で先進的な人々として知られている。インド洋岸のタンガからの鉄道が1921年に敷設されて形成された,キリマンジャロ南麓の小都市モシにも居住し,商業に従事する者も多い。

 しかし,一方では伝統的な文化,社会も強く残っている。チャガ族の社会は父系クランが基本となっている。クランは山腹の谷と尾根稜線でできた自然的境界により分かれていて,それぞれ首長をいただく自律的集団であった。これらを全体的に統合する政治組織をもたなかったが,19世紀に入り,いくつかの首長制王国にまとまった。この社会は年齢階梯の組織ももっており,男女とも割礼を伴う加入式を行う。伝統的な宗教としては,祖霊を信仰し,社(やしろ)を設けて,祖先頭蓋骨をおさめて祈る。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チャガ族」の意味・わかりやすい解説

チャガ族
チャガぞく
Chaga; Chagga

タンザニア北部,キリマンジャロ山の肥沃な南斜面に住むバンツー語系の農耕民。人口は 100万人をこえると推定される。家畜の肥料と灌漑を利用する集約農業で,アフリカで最も豊かで近代的な社会組織をもつ民族の一つである。主要作物としてシコクビエ,バナナを,換金作物としてはコーヒーを栽培する。チャガはカンバ族を主として,テイタ族,マサイ族などに起源をもつ移住民の主要 400氏族から成り,比較的平等主義を保っている。伝統的には政治的に独立した首長国の集合体で,父系出自に基づく社会体系をもち,一夫多妻婚が一般的。マサイと同様な男子年齢階梯組織をもつ。

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