日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャベス」の意味・わかりやすい解説
チャベス(Hugo Chávez)
ちゃべす
Hugo Rafael Chávez Frías
(1954―2013)
ベネズエラの政治家。大統領を務め、急進的反アメリカ左翼陣営のリーダー的人物として知られた。ベネズエラ内陸部のバリナス州サバネタの貧しい教師の家庭に生まれる。敬愛する人物はキューバ革命を行ったカストロとラテンアメリカ独立の父ボリーバル。1975年に士官学校を卒業、陸軍に入隊した。1992年、中佐時代にクーデターを企てて失敗し逮捕されるが、これを機に注目されるようになる。1998年12月のベネズエラ大統領選挙で初当選し、1999年2月就任。ボリビアやエクアドルなど中南米諸国で相次いで反アメリカ左派政権が誕生するきっかけとなった。潤沢な石油資源を活用し、キューバやカリブ諸国などに年間70億ドルに及ぶ石油を提供したほか、エクアドルやニカラグアなどで左派大統領候補に選挙資金を提供した。中南米地域でアメリカの影響力をそぐ経済外交を展開したほか、アメリカと距離を置くロシア、中国、イランなどとの友好関係を築いた。アメリカなどの外国資本を帝国主義と批判し、強力な指導力で貧困支援策を次々と打ち出し、貧困層中心に庶民の人気を集めた。2002年4月にクーデターが起こり監禁されたが、クーデターはすぐ失敗に終わり、大統領に復帰した。2006年には国連総会で演説し、前日に演説したアメリカのブッシュ大統領について「昨日、ここに悪魔がいた。まだ嫌な臭いがしている」と発言して物議をかもした。2011年には癌(がん)手術を受けたことを公表、2012年10月には大統領選で4選を果たしたが、癌が再発し、2013年3月5日、首都カラカスの病院で死去した。1999年(平成11)と2009年(平成21)に来日している。
[矢野 武]
チャベス(Carlos Chávez y Ramírez)
ちゃべす
Carlos Chávez y Ramírez
(1899―1978)
20世紀メキシコの代表的作曲家、指揮者。母方にインディオの血を引くメスティソ(混血児)として生まれる。マヌエル・ポンセに師事し、10代から作曲を始める。1921年のバレエ曲『新しい火』にすでにみられるように、メキシコ・インディオの土着的な音楽を西欧音楽のなかでいかそうとする作風によって知られている。また、現代のメキシコ文化ではなく、古代のアステカ文化の再生を図る民族主義的傾向も強い。メキシコ交響楽団の指揮者、メキシコ国立音楽院の院長も務めた。代表作は、バレエ曲『馬力』(1927)、『アンティゴナ交響曲』(1932)、メキシコ民族楽器を含む打楽器合奏のための『トッカータ』(1942)、バレエ曲『ピラミッド』(1968)など。
[細川周平]