チャールズ石(読み)ちゃーるずせき(その他表記)charlesite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャールズ石」の意味・わかりやすい解説

チャールズ石
ちゃーるずせき
charlesite

エットリンゲン石鉱物に属するカルシウムアルミニウムの含水塩基性ホウ酸塩硫酸塩鉱物。1960年ハールバットCornelius Searle Hurlbut Jr.(1906―2005)とバウムJohn Leach Baum(1916―2011)によってアメリカ、ニュー・ジャージー州スターリング・ヒルSterling Hill鉱山から発見された。彼らはこれをエットリンゲン石の変種として記載したが、1982年、ダンPete J. Dunnらはこれを新鉱物と判断して国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・鉱物名委員会(現、新鉱物・命名・分類委員会)にバウムらと共同で申請、承認され、翌1983年正式に記載された。なお、1960年の記載の際の化学分析を行ったのは当時ハーバード大学に勤務していた伊藤順(1926―1978)であった。彼はハールバットに分析結果を報告した際、「この鉱物の主成分はH2O。重量で約50%ある」と告げ、エットリンゲン石には含まれていないホウ素の存在と合わせてその特異性を主張したが、1960年の段階では採用されなかった。

 自形は低い六角複錐(ふくすい)。原産地では変成層状亜鉛・マンガン鉱床の低品位鉱石を切る脈中に産する。日本では岡山県高梁(たかはし)市備中(びっちゅう)町布賀(ふか)の再結晶石灰岩を切る脈として産し、方解石と密接に共存する。共存鉱物は原産地では、ばら輝石、ケイ亜鉛鉱willemite(化学式Zn2[SiO4])、灰礬(かいばん)ざくろ石ペクトライトなど。同定は自形が出ていればかなり特徴的であるが、非常に微細である。エットリンゲン石系鉱物の特徴として、著しく比重が小さく、硬度が低い。命名はアメリカ、ハーバード大学鉱物学教授チャールズ・パラシェCharles Palache(1869―1954)にちなむ。パラシェは原産地ならびに隣接するフランクリン・ファーネスFranklin Furnace鉱山産の鉱物について、詳細な研究を残した。

加藤 昭]


チャールズ石(データノート)
ちゃーるずせきでーたのーと

チャールズ石
 英名    charlesite
 化学式   Ca6Al2[(OH)12|B(OH)4|(SO4)2]・26H2O
 少量成分  Si。これが入ると式はCa6(Al,Si)2[(OH,O)12|B(OH)4|(SO4)2]・26H2O
 結晶系   六方
 硬度    2.5
 比重    1.77
 色     白~無色
 光沢    ガラス
 条痕    白
 劈開    c軸に斜交する方向で三方向
       (「劈開」の項目を参照

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