ツキミソウ(読み)つきみそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツキミソウ」の意味・わかりやすい解説

ツキミソウ
つきみそう / 月見草
[学] Oenothera tetraptera Cavan.

アカバナ科(APG分類:アカバナ科)の二年草。茎は粗く、分枝して高さ30~60センチメートル。葉は互生し、披針(ひしん)形で不ぞろいに羽状に裂ける。夏、葉腋(ようえき)に径3~4センチメートルの白色花をつけ、茎の上部に総状に配列する。花弁は倒心形で、しぼむと紅変する。夕刻から開花し、翌朝までにしぼむ。子房は白色の長毛で覆われ、果期に倒卵形となり、8稜(りょう)がひれ状に突出する。メキシコ原産で、日本には嘉永(かえい)年間(1848~1854)に渡来して栽培されるようになったが、野生化はしていない。

 近縁のヒルザキツキミソウO. speciosa Nutt. は本種によく似るが、これは北アメリカ原産の多年草で、夜から昼に開花する。横走する根茎を伸ばし、茎上の葉は鋸歯(きょし)が浅い。茎や葉には曲がった短毛が多い。花序はつぼみのとき下向きに垂れ、白色花のほかに淡紅色花がある。子房は曲がった短毛を密生し、果期に棍棒(こんぼう)状となり、8稜はひれ状に突出しない。これらの点でツキミソウとは異なる。観賞用として導入されたものが逸出し、関東地方に普通に野生化している。

 ツキミソウという呼称特定の1種をさすものであるが、一般にはマツヨイグサ属各種の総称となっている。また近縁種のマツヨイグサやオオマツヨイグサとともに宵待草(よいまちぐさ)とよばれて親しまれているが、これらは黄色花で、ツキミソウとは別ものである。

[小林純子 2020年8月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ツキミソウ」の意味・わかりやすい解説

ツキミソウ (月見草)
Oenothera tetraptera Cav.

アカバナ科の二年草。メキシコ原産で,日本には嘉永年間(1848-54)に渡来したといわれるが,現在ではほとんど栽培されていない。一般にいうツキミソウは本種ではなく,同属の帰化植物として広く分布する黄色花のマツヨイグサやオオマツヨイグサを誤称していることが多い。

 高さ60cmぐらいとなり,まばらに分枝する茎を直立し,あらい鋸歯のある披針形の葉を互生する。茎葉には微毛がある。夏に,葉腋(ようえき)に白色4弁花を咲かせるが,夕刻より開き,朝にはしぼみ紅変する。マツヨイグサ属Oenotheraは北アメリカを中心に分布し,約80種があるとされ,園芸的に栽培される種類もかなりある。オオマツヨイグサのように日本に帰化しているものもある。種子を春まきすれば翌年には開花する。秋まきでもよく,耐寒性があるため,冬期の防寒はとくにしなくともよい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツキミソウ」の意味・わかりやすい解説

ツキミソウ(月見草)
ツキミソウ
Oenothera tetraptera

アカバナ科の多年草で,メキシコ原産。草丈 50cm内外,全体は細かい毛でおおわれる。葉は互生し,披針形で,不整の深い鋸歯がある。夏,葉腋に大きな白い花をつける。夕方開き翌朝しぼんで紅変する。花弁は4枚あり,長さ 3cmほどで先端がへこんだ広い倒心臓形をしている。子房は下位につき花柱は高く花の上に突出し,柱頭は4つに分れる。 蒴果は倒卵形で,縦に4裂する。本種は嘉永年間 (1848~54) 頃に渡来し,観賞用に栽培されたが現在ではほとんどみられない。今日一般にツキミソウといわれるものは,いずれも黄色でのちに紅変する花をつける同属の別種でマツヨイグサ (待宵草)オオマツヨイグサ (大待宵草),アレチマツヨイグサ,メマツヨイグサなどである。

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百科事典マイペディア 「ツキミソウ」の意味・わかりやすい解説

ツキミソウ

マツヨイグサ

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世界大百科事典(旧版)内のツキミソウの言及

【マツヨイグサ(待宵草)】より

…アカバナ科の中では,葉がいずれも互生し,花が4数性,果実が蒴果であることを特徴とする。花は白色,黄色,紅紫色など種類によってさまざまであり,多くは夕刻に開き翌朝にはしぼむので,一般にはツキミソウと総称され,英語でevening primrose(夕闇のサクラソウの意)と呼ばれる。マツヨイグサの仲間は,古くから細胞学的な研究対象としても知られているが,細胞分裂に異常を生じやすく核型は多形であり,併せて雑種をつくりやすいこともあって外形的にも変化が大きく,分類はなかなか難しい。…

※「ツキミソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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