愛唱歌の曲名。竹久夢二作詞、多忠亮(おおのただすけ)作曲。1918年(大正7)5月、セノオ楽譜発行。明治の流行歌や唱歌調を脱し、また中山晋平(しんぺい)の一連の曲とも違った叙情的、感傷的な曲で、現代でも愛唱されている。もとの詞は七五調三句からなる短詩のため、のちに西条八十(やそ)が二節目を書き加えたこともある。著名な画家である夢二は詩作もよくし、セノオ楽譜から『なみた』『花をたつねて』ほかを出版。また大正中期以降は、同楽譜の表紙絵も多数描いた。なお、宵待草とは夏に咲くマツヨイグサ属の異称で、日没後に開花し翌朝しぼむ。その生態が「待てど暮らせど来ぬ人を」と歌う内容によく合致している。
[倉田喜弘]
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…花は黄色,夕刻に開き,翌朝しぼんで紅色になる。 竹久夢二が1912年に発表した〈待てど暮らせど来ぬ人を宵待草(よいまちぐさ)のやるせなさ……〉の歌詞は有名であるが,正しくは待宵草とすべきものであった。 茎は高さ30~90cm,上方でまばらに分枝し,葉は多数が互生し,披針形,無柄,中肋は白色で縁にあらい鋸歯がある。…
…漂泊の人生を送り,郷愁と憧憬を日本画,油絵,水彩画,木版画にあらわし,詩や童謡にうたった。つぶらな瞳の愁いを帯びた“夢二式美人”は多数の夢二画集や雑誌を通して,大正期の大衆の心をとらえ,1913年作の《宵待草》の歌は大流行した。しかし,生前は,独学の大衆画家であるゆえに画壇からは無視され,正当な評価を得たのは第2次大戦後である。…
※「宵待草」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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