改訂新版 世界大百科事典 「ツチスドリ」の意味・わかりやすい解説
ツチスドリ (土巣鳥)
magpie-lark
スズメ目ツチスドリ科の鳥の1種,またはツチスドリ科の鳥の総称。ツチスドリGrallina cyanoleucaは全長約27cm。羽色は黒白の粗い模様で,雌雄は頭部の模様が違っている。オーストラリア本土に広く分布する。開けた林,農耕地,人家近くや公園など,水と開けた場所のあるところにすんでいる。留鳥だが,季節によって移動する。繁殖期以外は小群で生活し,また幼鳥は秋に幼鳥だけの群れをつくる。くちばしはやや細長く,餌は主として地上であさり,昆虫類を主食としているが,種子や漿果(しようか)などもかなり食べている。ツチスドリの特徴は,その名のように,湿った泥を主材とし,それに葉,茎,根などの小片を混ぜ合わせて,横枝の上に鉢形の巣をつくることである。1腹の卵は3~5個。卵は白っぽい地に濃い斑点があり,雌雄とも抱卵,育雛(いくすう)する。雌雄ともよくさえずり,またつがいで二重唱を歌う。
ツチスドリ科Grallinidaeは3属4種からなり,そのうちツチスドリ,ツチスガラスCorcorax melanorhamphos(英名white-winged chough),ドロドリStruthidea cinerea(英名apostle bird)はオーストラリアに,カワツチスドリG.bruijni(英名torrent-lark)はニューギニアに分布している。これらの鳥は,みな互いによく似た泥の巣をつくる習性をもっているが,この点を除けば,ツチスドリ属の2種と他の2種とは生態が非常に違っていて,後者を別の科に分類する人も少なくない。ツチスガラスは全長約50cm。全身光沢のある黒色で,翼に白帯がある。くちばしは細長く,下に湾曲し,昆虫類と幼虫を主食としている。ドロドリは全長約33cm。体の大部分が灰色でくちばしは太く短く,主として種子類を食べている。どちらもオーストラリア東部の開けた林に生息する。この2種の独特の習性は,5~10羽のグループで生活し,グループでなわばりをもち,繁殖もグループ単位でする。すなわち,グループで一つの巣をつくり,そこに2~3羽の雌が2卵ずつ産卵し(1巣の卵は2~8個),グループ全員で抱卵,育雛にあたる。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報