ツノゼミ(読み)つのぜみ(英語表記)treehopper

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツノゼミ」の意味・わかりやすい解説

ツノゼミ
つのぜみ / 角蝉
treehopper

昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目ツノゼミ科に属する昆虫の総称、またはそのなかの1種。セミの名があるが、セミ科よりもヨコバイ科に近縁である。小形で、体長1~25ミリメートル、多くは5~10ミリメートル。頭部は垂直で、顔は下側を向く。左右の複眼は大きく離れ、頭頂部には2個の単眼がある。前胸背はとくに発達し、1対の角(つの)状突起と腹端近くまで伸びる1本の後突起がある。角状突起にはさまざまな形が知られ、スイギュウの角、錨(いかり)、シカ角などの形をしたもののほか葉状に隆起するもの、1本の大きく上方に突出する角をもつものなどいろいろである。なかには、角状突起を欠くもの、まれに後突起を欠くものが知られる。小楯板(しょうじゅんばん)は後突起の下に隠れることが多い。植物体上に生活し、茎、枝、葉脈などから吸汁する。幼虫(まれに成虫)がアリと共生するものが知られ、また幼虫集団を雌成虫が守るものがある。世界に約2500種、日本には十数種を産する。

 和名ツノゼミOrthobelus flavipesは、体長5~8ミリメートルの黒色のツノゼミで、角状突起は棘(きょく)状。はねは透明で褐色を帯びる。おもに山地性で、種々の植物上にみられる。卵で越冬。ツノゼミによく似たニトベツノゼミCentrotus nitobeiは、体長8~11ミリメートルでツノゼミ類のなかでは日本最大種、角状突起も太くて大きく、強く湾曲する。ほかに、体は褐色で、角状突起が太く、こぶ状あるいはへら状となるトビイロツノゼミMachaerotypus sibiricusやモジツノゼミTsunozemia mojiensis、角状突起を欠くマルツノゼミGargara genistae、オビマルツノゼミG. katoiなどが知られる。

[林 正美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツノゼミ」の意味・わかりやすい解説

ツノゼミ
Membracidae; treehopper

半翅目同翅亜目ツノゼミ科に属する昆虫の総称。セミに似た形の小型の昆虫で,頭部は垂直。前胸背は発達して頭部をおおい,また後方に突起状に伸びて小楯板 (中胸背) のみならず腹部をも完全におおうものもある。その形はきわめて多様で,想像を絶するような奇異な変形を示すばかりでなく,色彩も奇抜なものが少くない。頭部には複眼間に2個の単眼がある。翅は膜状で明瞭な翅脈がある。後肢脛節は角ばる。成虫,幼虫とも植物上で生活する。熱帯に多くの美麗かつ奇形の種を産するが,日本産は体色が黒ないし褐色で,角状突起も単純である。ツノゼミ Butragulus flavipesは,体長 (翅端まで) 6~7mm,体は黒色で黄色の微毛におおわれる。複眼は大きく両側に突出する。前胸背の両側の突起は長く上側方に突出し,その先端は後方に向ってとがる。北海道,本州,四国,九州の山地に産し,いろいろな広葉樹上にみられる。 (→同翅類 , 半翅類 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報