ティン(読み)てぃん(英語表記)Samuel Chao Chung Ting

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティン」の意味・わかりやすい解説

ティン
てぃん / ティンチャオチュン
Samuel Chao Chung Ting
(1936― )

アメリカの物理学者。中国名は丁肇中(ティンチャオチュン)。両親がアメリカ訪問中にミシガン州アナーバーで生まれたため、アメリカの市民権を得た。生後2か月で中国に戻り、20歳のとき、ふたたびアメリカに赴いた。ミシガン大学を1959年に卒業、1962年博士号を取得した。その後、ジュネーブのヨーロッパ原子核研究機構(CERN(セルン))、コロンビア大学などで加速器を用いて原子を構成する基本粒子の研究を行った。1969年マサチューセッツ工科大学(MIT)物理学科のスタッフとなる。1971年ブルックヘブン国立研究所で実験を進め、1977年にはMITの教授となった。

 ブルックヘブン国立研究所において、シンクロトロンを用いてベリリウム陽子を照射した結果、長寿命の新しい粒子を発見、J粒子と名づけた。同時期にリヒターによっても同じ粒子が発見され、ψ(プサイ)粒子と名づけられた。のちに両者の発見がともに認められ、J/ψ粒子とよばれた。この粒子は、4番目のクオークであるチャームクオークの存在を実験的に証明するものであった。この業績に対し、1976年リヒターとともにノーベル物理学賞が与えられた。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ティン」の意味・わかりやすい解説

ティン
Ting, Samuel Chao Chung

[生]1936.1.27. ミシガン,アナーバー
中国人を両親にもつアメリカの物理学者。家族とともに,アメリカ,中国大陸,台湾を転々とし,アメリカに留学 (1956) ,ミシガン大学に学んだ。 1962年学位取得後,ヨーロッパ原子核研究機関 (セルン CERN) に所属,高エネルギー物理,素粒子論の研究に従事。コロンビア大学を経てマサチューセッツ工科大学教授 (1967) を務めるかたわら,セルン,ニューヘーブン,ハンブルクなどで素粒子研究を指導。 1974年,B.リヒターとは独立に,従来発見されているものとは異なる性質の新たな素粒子を発見,J粒子と命名した。この発見は従来の素粒子論で提唱されていた3種のクォークに加えて,さらに第4のクォークの必要性を示唆するものと考えられている。 1976年リヒターとともにノーベル物理学賞受賞。

テイン
Tejn, Michael

[生]1911.10.12. オールフス
[没]1994.7.18.
デンマークの小説家。『カタストロフィー』 Katastrofe (1938) ,『忘れられた道』 Den glemte vej (39) などで人間の孤独を心理主義風に追究,愛を忘れた人間の不幸を描いて注目を集めた。その後大作『夢と現実』 Drømmen og Virkeligheden (42) から『人間の愛』 Menneskennes kærlighed (46) まで4巻を完成させたが,これはあまり高く評価されていない。

テイン

カフェイン」のページをご覧ください。

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