日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティーチング・マシン」の意味・わかりやすい解説
ティーチング・マシン
てぃーちんぐましん
teaching machine
文字どおりには「教えるための機械」であるが、単にテレビジョンやテープレコーダーなどの教育機器をさすものではなく、プログラム学習の実施の際にプログラム化された教材を用いて、学習指導の個別化を可能にする教具のことである。したがって、狭義には機械そのものをさし、広義にはプログラム学習書などを含めて考えることができる。
1926年にアメリカの教育心理学者プレッシーSidney Leavitt Pressey(1888―1979)が発表した「テストし、採点し、そして教える簡単な装置」という論文のなかで紹介されたのが初めである。ついで、1950年代のなかばに、B・F・スキナーが自らの学習理論を適用して開発した学習プログラムとティーチング・マシンを発表して、その概念を確立させた。1960年代から1970年代後半にかけては、コンピュータの発達が、より適切な提示・診断・評価・制御の機能をもつCAIシステムの発展の基礎となり、さらにこのCAIシステムは、2000年以降の遠隔教育の旗頭であるWebラーニングやeラーニングといったネットワーク技術を活用した教育システムの基盤の一つになったといえる。
学習の個別化を可能にすることから、ティーチング・マシンには、(1)情報提示、(2)反応喚起(問題を出し解答するよう指示する)、(3)フィードバック(答えの正誤を知らせたり、次にすべきことを指示したりする)、(4)学習進度の調整、などの機能がある。これらは、学習指導過程の組立てや反応処理の型に関するさまざまな学習理論と結び付いて、プレッシー型、スキナー型、クラウダー型などとよばれるティーチング・マシンを発達させている。
ティーチング・マシンのもつ諸機能が学習成立のための必要条件であるため、ティーチング・マシンは人間の教師のかわりをする教具といわれることもある。しかし、ティーチング・マシンは、人間の教師の活動をそのまま代替するものではなく、教師の指導効果をよりいっそう発揮させるためにつくられた補助手段であることを忘れてはならない。
[篠原文陽児]
『ラムズディン・グレイザー著、西本三十二監訳『学習プログラムとティーチング・マシン』(1961・学習研究社)』▽『大内茂男・中野照海編『教授メディアの選択と活用』(1982・日本図書文化協会)』▽『白鳥元雄・高桑康雄著『メディアと教育』新訂版(1999・放送大学教育振興会)』